ReRise第19話『活路』
BGM
REFRESH_RMX
脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2017-04-15 00:42:46

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最上静香
瑞希さんが勝利を掴んだのを見届けた後、私はレッスン室へと戻った。
最上静香
そこには、千早さんの姿があって。貴音さんと話していて遅れた私を待っていてくれたみたい。
如月千早
「大変なことになったわね…。」
最上静香
千早さんも試合を見ていたようで、第一声として掛けられた言葉がそれだった。
最上静香
「本当に、どうしたらいいのか…正直に言って、先が見えません。」
最上静香
琴葉さんもそうだけど、大きなアドバンテージを持った瑞希さんも、準決勝に絡んできた。
最上静香
抽選の結果次第とはいえ、3分の2の確率で自分を上回る相手と対戦しなくてはならない。
最上静香
野々原さんやエレナさんは、この二人に比べたら凄みは感じないけど…。
最上静香
だからと言って、3分の1を祈るというのでは、情けないわよね。何か打つ手は…。
如月千早
「…静香。」
最上静香
千早さんの穏やかな声。不安に揺れる私を包む、優しさと力強さを感じる。
如月千早
「不安なのは仕方ないけど、迷うのはダメ。迷った目では、活路を見逃すわよ。」
最上静香
「…はい!」
最上静香
こうやって、私を支えてくれる人がいる。たしかに、弱気になっている場合じゃないわね。
如月千早
「そういえば、準決勝で歌うのは、結局どの曲にしたの?」
最上静香
千早さんの問いかけに、私は考える。
最上静香
残されているのは、自分のデュオ曲やユニット曲のソロ・バージョンである『グループ曲』。
最上静香
そして、自分がオリジナルメンバーではない曲すべてを指す『その他』。
最上静香
これから準決勝に向けて、どちらかを選んでレッスンを一本化しなければならない。
如月千早
「やっぱり『グループ曲』かしら?」
最上静香
それには、首を横に振った。そちらを歌うには、どうしても足りないものがあるから。
最上静香
「今回は『その他』の楽曲を選びます。」
最上静香
そう告げたとき、心の引き出しからこぼれ出たものがひとつ。
最上静香
いつの間にか私は、昨日浮かんだアイデアを実行してみようという気になっていた。
如月千早
「静香が練習していたのは、『蒼い鳥』だったわね?」
最上静香
そう。私が準備していたのは、千早さんの持ち歌。だけど…。
最上静香
「その件ですけど、千早さん。私、歌ってみたい曲があるんです。」
最上静香
「それは…。」
最上静香
私の挙げた曲名を聞いて、千早さんの目が驚きで丸くなる。
如月千早
「…意外ね。静香って、そういう冒険をするタイプとは思っていなかったわ。」
最上静香
意外と言っているけど、感心もしてくれてるみたい。感触としては悪くないかしら?
如月千早
「面白いとは思うけど…。今から練習して、本番までに間に合う?」
最上静香
千早さんの懸念はもっともな話ね。
最上静香
歌や振り付けを覚えるだけならともかく、その精度を高めるには、より多くの時間が必要になる。
最上静香
だからこそ、数日で『I Want』をものにしていた桃子の凄さがよくわかるのだけれど…。
最上静香
ただ、私の場合は、それとはまた事情が違っていた。
最上静香
「実は、自分で練習して、歌も振り付けも一通り覚えているんです。」
最上静香
少しばつが悪くて、笑いながら告白した私に、千早さんはもう一度目を丸くして。
最上静香
でも、その顔も私と同じように、すぐに笑みに崩れていった。
如月千早
「わかるわよ…。私も同じようなこと、したことがあるから。」
最上静香
…千早さんが?
最上静香
そう思うと、たまらなくおかしくなって、私は笑ってしまって。
最上静香
二人とも笑いが止まるまで、しばらく時間が必要だった。
如月千早
「…それでも、自主練だけでは限界があるから、やはり教えてくれる人が必要ね。」
最上静香
「はい。『あの人』しかいません。」
如月千早
「…大丈夫?手は空いてそう?」
最上静香
「大丈夫だと思います。…暇だって、ぼやいてたくらいなので。」
最上静香
それで、話は決まった。
最上静香
となれば、時間は一瞬でも惜しい。私は、さっそく動き始めることにする。
最上静香
でも、その慌ただしさの中には、どこかわくわくするものが含まれているようだった。

(台詞数: 50)