ジュリア
港町って初めて来たけど、なんか、岸壁がいい感じで、ギター持ってくりゃよかったな。
徳川まつり
水面がキラキラで、みんなも自分のキラキラを表現していて、とってもわんだほーなのです。
ジュリア
キラキラでわんだほー、か。あのさ。今日はほんとに祭だけど、劇場って、毎日が祭だよな。
徳川まつり
ほ?劇場はまつりのお城なのですから、当然なのです?
ジュリア
ハハ。劇場じゃさ、毎日いろんなことが起こって、びっくりしたり、笑ってばっかでさ。
ジュリア
そのぶん逆に?なのかな、かえってというか、誰かと二人きりになりたい瞬間ってのがあるんだ。
徳川まつり
その感じは、姫にもわかるかもなのです。いつもみんなの姫でいるのは疲れるのです。
ジュリア
悪いね、付き合わせちまって。
徳川まつり
それで?まつりに訊きたいこととは、何なのです?
ジュリア
ああ、うん……。
ジュリア
この海のほとりで、暮らしたいな。
徳川まつり
ほ?それには…答えがないのです。
ジュリア
それで、対岸に、ほら、あの山の麓で、犬と暮らしてる人がいて。
ジュリア
アタシはこっちで猫を飼っていて。
徳川まつり
それはわんだほーなのです。
ジュリア
魚が釣れると、料理の火で煙が上がるだろ。それを見て、ああ、よかった、って。
徳川まつり
ジュリアちゃん、せっかくお魚さんを焼けるようになったのに?その方のこと、好きなのです?
ジュリア
どうだろ。たぶん。だけど、好きなんだけど、その『好き』を恋愛にはしたくないっていうか。
徳川まつり
ふうん?だから向こう岸なのですね。
徳川まつり
……彼の岸と書いて、彼岸と読む也。
ジュリア
え?
徳川まつり
姫もたまに疲れると言いましたけれど、
徳川まつり
夢に手を伸ばし続けるのは、どうしたってフワフワばかりじゃないのです。
徳川まつり
ほんとうの夢には、重さがあるのです。
ジュリア
夢は、重い…。
徳川まつり
こほん。いいのです?
徳川まつり
ジュリアちゃんが眺めているそのうちに、その方は、いつか犬と二人で旅に出るのです。…ね?
ジュリア
ん、ああ。でもソイツがそれで幸せなら。
徳川まつり
それはもう帰らぬ旅で、もう、向こう岸に煙は上がらないのです。……ね?
ジュリア
それでも、幸せでいてくれたら。
徳川まつり
と、年老いた犬は、旅路半ばで死ぬのです!
ジュリア
え?
徳川まつり
ね?こっちの岸にいるなら、その方が幸せでも孤独でも、ジュリアちゃんにとっては同じこと。
ジュリア
お、おんなじじゃねえよ…。
徳川まつり
ジュリアちゃん。
ジュリア
…うん。
徳川まつり
その方が湖に落ちたら、溺れるかもしれない、けがをさせるかもしれないけれど、
徳川まつり
その手を掴まないで彼を助けることはできないのです?
徳川まつり
ジュリアちゃんがほんとうにその方の幸せを願うということは、ね?
徳川まつり
相手の人生を台無しにするかもしれなくても、その手を掴むところからしか始まらないよ?
ジュリア
……ルミがそんなこと言うなんてな。あんまりフワフワしてないぜ。
徳川まつり
フワフワはしてないけれども、キラキラはしてるのです。
ジュリア
そうか。
徳川まつり
それが人生、つまり、まつりなのです。
ジュリア
ああ……そうか。そうなのか。
徳川まつり
そうなのです。最近ジュリアちゃんが恋煩いしてたこと、姫はお見通しなのです。
徳川まつり
ジュリアちゃんは、ギターバカをやり続ければいいのです。
ジュリア
ひでえなオイ!!!
徳川まつり
ほ?まつりはもう行くのです♪
ジュリア
………しゃあねえな。当たって砕けてやるか!おーい、プ、プロデューサー!
(台詞数: 50)