焦熱
BGM
赤い世界が消える頃
脚本家
親衛隊
投稿日時
2017-02-21 23:43:46

脚本家コメント
4年後。暗めです。

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高槻かすみ
薄暗い階段を上り、『765プロダクション』と書かれたドアの前に辿り着く。
高槻かすみ
一つ、二つ、大きく深呼吸をする。
高槻かすみ
この扉を開けたとき、私は姉と同じ道を歩み出す。
高槻かすみ
覚悟を決め、緊張で震える足を半歩前に出し、ドアノブを掴んだ。
高槻かすみ
いざ──
箱崎星梨花
「どうかしました?」
高槻かすみ
「わわ……!」
高槻かすみ
背後の声に驚き、思わず転びそうになる。
箱崎星梨花
「……? こんにちは」
高槻かすみ
「こ、こんにちは……」
高槻かすみ
ツインテールがよく似合うその人は、一目でアイドルだと判るほどに綺麗な人だった。
箱崎星梨花
「もしかして、高槻かすみさん……ですか?」
高槻かすみ
「は、はい……!」
箱崎星梨花
「お話は聞いてます。わたし、765プロ所属の箱崎星梨花です。よろしくね」
高槻かすみ
「あ……よろしく、お願いします」
高槻かすみ
辿々しく挨拶を交わす。
箱崎星梨花
「立ち話もなんですから、中へどうぞ」
高槻かすみ
記念すべきアイドルとしての第一歩は先輩によって開かれた。
箱崎星梨花
「社長は少しお出掛けしているので、そこのソファーに座って待っていてくださいね」
高槻かすみ
「は、はい……」
高槻かすみ
外観を見て、部屋の広さは推察できた。
高槻かすみ
昔、姉は「アイドルの事務所には仲間たちがいっぱい常駐してるから賑やかだ」と言っていた。
高槻かすみ
しかし、これは──。
箱崎星梨花
「どうしました?」
高槻かすみ
「いえ、他のアイドルの方はどちらに──」
高槻かすみ
言いかけて、ふと壁際にあるホワイトボードに目が行く。
高槻かすみ
隙間なく書かれたスケジュール。中には誰もが知っているであろう超有名番組の名前もあった。
箱崎星梨花
「……ちょっと前までは、よく皆で集まってたのですけど」
高槻かすみ
心なしか、星梨花さんの笑顔は寂しそうに見えた。
箱崎星梨花
「ところで、かすみちゃん。歳はおいくつですか?」
高槻かすみ
「13歳……です」
箱崎星梨花
「13歳! わたしもそれくらいの歳でアイドルになったんです」
箱崎星梨花
「その時からずーっと、あなたのお姉さんに憧れていたんですよ?」
高槻かすみ
「やよいお姉ちゃんに?」
箱崎星梨花
「年齢も背丈も、わたしとそう違わないのにすごいパワフルで……」
箱崎星梨花
「いつも明るくて、まるでみんなを照らす『太陽』のような素敵な人だと思いました!」
高槻かすみ
そう嬉しそうに語る星梨花さん。姉の話なのに、つい私まで嬉しくなってしまう。
高槻かすみ
「えへへ……」
箱崎星梨花
「ふふ、やっと笑ってくれました」
高槻かすみ
「あ……」
高槻かすみ
星梨花さんは優しく微笑む。先刻の寂しげな表情は幾分か和らいでいた。
箱崎星梨花
「かすみちゃん、笑ったときのお顔がお姉さんにそっくりですね」
箱崎星梨花
「あなたも『太陽』になるのかな?」
高槻かすみ
……全部、知っている。家族だもの。
高槻かすみ
太陽は燃え続けていること。
高槻かすみ
分厚い雲に覆われても尚、燃え続けていること。
高槻かすみ
そんな、明日は必ず晴らそうと粉骨砕身する姉の姿を知っている。
高槻かすみ
知っているからこそ、輝かなきゃと思う。
高槻かすみ
姉に負けないほどの輝きで、今度は私が……姉を助けてみせる。
高槻かすみ
絶対に……絶対に負けないから。

(台詞数: 50)