真壁瑞希
『全て…知っているのは、貴方なんですから―――――』
望月杏奈
その言葉の意味も、意図も、杏奈には到底理解することが出来なかった。
望月杏奈
けど、本当にあの扉の先には広大な宇宙の海がどこまでも広がっていた。
望月杏奈
その海の流れに身を任せるように、杏奈は二人に
望月杏奈
この海のどこかに、あの懐かしい声の主がいる。
望月杏奈
そうじゃなければ、杏奈はわざわざこんなに寒くて、暗くて、寂しい場所にはこない。
望月杏奈
それが杏奈がここにいる理由。
望月杏奈
でも、彼女はどうしてこんなところにいるのかな…
望月杏奈
いや、流れ着いただけなのかもしれないけど…
望月杏奈
杏奈にはその理由も過程も想像することができない。
望月杏奈
けど、もし杏奈も独りでこの無重力の海を漂流するとしたら…
望月杏奈
同じ場所に流れ着くことができるのかな…
望月杏奈
ザー…ザー…ザー…
望月杏奈
目を瞑れば聞こえてくる音…
望月杏奈
その音にあの声は混じっていない。
望月杏奈
ただ、わかるのは、これが宇宙の波の音…ってことかな?
望月杏奈
この音に乗って、彼女のメッセージは壊れたラジカセから聞こえてきたのだろうか…
望月杏奈
宇宙にたゆたう杏奈の身体は、次第にその波に呑まれていく…
望月杏奈
いまはもう、海面をぷかぷか浮いているというよりは…
望月杏奈
少しずつ海底に沈んでいっているかのような感覚を覚える。
望月杏奈
この深淵の底に、杏奈の求める答えがあるのかな…
望月杏奈
二人に聞いても、きっと答えてはくれないと思った。
望月杏奈
またはぐらかされるだけ…
望月杏奈
二人からすれば杏奈は既に全てを知っているはず…なのに…
望月杏奈
全てを知っているということは、この先にある答えも…
望月杏奈
その声の主の事も知っているという事になる…
望月杏奈
けれど、杏奈は何も知らない。
望月杏奈
だから余計モヤモヤして…不安になる。
望月杏奈
杏奈が何を知っているというのだ…。
望月杏奈
それがわからない自分自身に腹が立って、それに気付けない自分自身がもどかしく思う。
望月杏奈
考えれば考えるほど、その底の見えない沼のようなものに嵌っていく杏奈がいた。
望月杏奈
悪循環だから…やめよう…
望月杏奈
思考回路のスイッチを一度オフにして、リセットを図る…
望月杏奈
ザー…ザー…ザー…ザー…ザー…ザー…ザー…ザー…ザー…ザー…ザー
箱崎星梨花
『…………ますか?………ザー…ザー…』
望月杏奈
その波の音は…杏奈を記憶の海へと誘っていく…
望月杏奈
「…ちゃん?」
望月杏奈
そのノイズに混じって聞こえてくる懐かしい声、それに反応して、言葉を漏らす。
望月杏奈
小さい頃、封印してしまった記憶…
望月杏奈
ずっと忘れていた、忘れざるを得なかった…そんな思い出…
望月杏奈
大切だったはずの人なのに…いまの今まで何も思い出すことができなかった…
箱崎星梨花
『聞こえますか?杏奈ちゃん』
望月杏奈
『ん~…ダメみたい…』
望月杏奈
『壊しちゃってごめんなさい…星梨花お姉ちゃん…』
箱崎星梨花
『そんな悲しい顔しないでください、お姉ちゃんが魔法で直してあげますから』
箱崎星梨花
『えいっ!!』
望月杏奈
その笑顔はとっても素敵で眩しくて、一人ぼっちだった杏奈といつも遊んでくれた。
望月杏奈
そんな…杏奈の大好きだった優しいお姉ちゃん…
望月杏奈
「星梨花…お姉ちゃん…?」
(台詞数: 49)