箱崎星梨花
四日目、五日目、六日目・・・
箱崎星梨花
全く同じ夢を、全く同じところまでいくと目が覚める
箱崎星梨花
時計を見ると、同じように丁度午前三時
箱崎星梨花
正直不愉快極まりない悪夢だけど、そんな夢に慣れてきてしまっているAがいた
箱崎星梨花
どうせドアノブに手を掛けて回したところで目が覚めるんだから・・・
箱崎星梨花
そんな妙な安心感と、友人が気休めにとくれた黒いお守りのことも相まってか・・・
箱崎星梨花
怖いという感覚が麻痺をして不思議となくなっているようだった
箱崎星梨花
「後四日」、友人の言葉通りなら、後一日、今日同じ夢を見れば終わる
箱崎星梨花
そう高を括っていたのかもしれない・・・
箱崎星梨花
気付くと女が、いつもと同じように玄関の前に立っている
箱崎星梨花
いつの間にか寝落ちをしていたらしい
箱崎星梨花
包丁を握ったまま、ギシギシと不快な歯ぎしりをして
箱崎星梨花
いつもの展開と同じように、左手でドアノブに手を掛けて、回す
箱崎星梨花
(やっと・・・やっとこれで解放される・・・)
箱崎星梨花
ガチャッ
箱崎星梨花
ニィッ・・・
箱崎星梨花
(え?なんで?)
箱崎星梨花
女は勢いよく扉を開けると、玄関に裸足のまま上がってくる
箱崎星梨花
キィイイイ・・・バタンッ
箱崎星梨花
扉の閉まる音がする
箱崎星梨花
それは夢が続いていて、女がAの部屋に入ってきているという事を意味していた
箱崎星梨花
それに気づいて、Aは全身の血の気が引いていくと共に、背筋がぞっとなる
箱崎星梨花
タッタッタッタン・・・
箱崎星梨花
女が木目の廊下の上を歩いている足音が耳元に響いてきて
箱崎星梨花
Aはようやく忘れていた恐怖を思い出すのだった
箱崎星梨花
(ダメ、こないで・・・これ以上こないで・・・)
箱崎星梨花
女はAの寝ているベッドの前に着くと、立ち止まる
箱崎星梨花
Aは寝ている自分の様子見ていることしかできない
箱崎星梨花
女は寝ているAの様子を腫物でも扱うかのような目で見つめてから・・・
箱崎星梨花
そのままの寝ているAの身体の上に乗る
箱崎星梨花
(起きて、起きてってば!!)
箱崎星梨花
女は包丁を両手に持つと、今にもAの胸に刺すぞ、と言わんばかりに両腕を上げている
箱崎星梨花
(このままじゃ・・・このままじゃ死んじゃうよ)
箱崎星梨花
「死ね」
箱崎星梨花
まるで耳元に囁かれたかのようにはっきりと女の声が聞こえてくる
箱崎星梨花
その時の女の声も、目も、悍ましくて、なんと表現していいかわからない・・・
箱崎星梨花
ただ、確実にこの女に殺されるんだな、ということだけはわかった
箱崎星梨花
グサッ
箱崎星梨花
「はっ・・・はぁはぁ・・・」
箱崎星梨花
目が覚めてから時計を見ると、午前三時
箱崎星梨花
助かったと胸を撫で下ろして、ベッドから起き上がると、体から何か黒い物体が落ちる
箱崎星梨花
慌てて電気を点けると、そこには先日友人にもらった黒いお守りが落ちていた
箱崎星梨花
黒いお守りは不自然に曲がって、折れていて・・・
箱崎星梨花
夢の女からAを守って、身代わりになってくれたのだろうか?
箱崎星梨花
その日以降、その女の夢は見なくなった
箱崎星梨花
翌日、友人の事の顛末洗いざらい話して、折れたお守りを出すと・・・
箱崎星梨花
「そうか・・・よかったな、これは預かっとくよ」
箱崎星梨花
そう言って、お守りを回収したきり、この話には二度と言及してこなくなった・・・
箱崎星梨花
その後、他の友人に聞いて知った事なのだが・・・
箱崎星梨花
友人の神社は昔から、地元では丑の刻参りで有名な神社だったらしい・・・
(台詞数: 50)