箱崎星梨花
「ねぇねぇ、夏も近いし、何か怖い話をしてよ」
箱崎星梨花
毎年、ちょうど今ぐらいの時期になると、そんな言葉をちらほらと聞くようになる
箱崎星梨花
まさに『夏の風物詩』だ
箱崎星梨花
わたしも、友人に怪談話をしてほしいとねだられるのだけれど・・・
箱崎星梨花
とりわけ怪談話に縁のないわたしには・・・
箱崎星梨花
誰かに語りきかせるような、そんな怪談話は持ち合わせていなかった・・・
箱崎星梨花
「それじゃあ・・・もしもゲームをしませんか?」
箱崎星梨花
そんな時の対策として、いつもこんな事を提案していた
箱崎星梨花
ルールは簡単です
箱崎星梨花
目を瞑って、わたしの言う通りに想像してもらうだけ
箱崎星梨花
ようするに、ただの妄想ゲームだった・・・
箱崎星梨花
「それでは目を瞑ってください」
箱崎星梨花
わたしに言われるがままに、友人達は目を瞑る
箱崎星梨花
「想像してください、貴方は今、貴方自身の生家の玄関の前にいます・・・」
箱崎星梨花
なるべく、雰囲気を演出するように、ゆっくりと、そして淡々と喋るようにして
箱崎星梨花
そして私の言われた言葉が、友人たちの頭の中に刷り込まれて・・・
箱崎星梨花
友人たちの想像を助長していく
箱崎星梨花
「それでは玄関から、家に上がって、廊下を進んで、居間に行ってください」
箱崎星梨花
友人たちを家にあがらせると、わたしは居間にいく様に指示をして・・・
箱崎星梨花
「・・・」
箱崎星梨花
「居間に着きましたか?」
箱崎星梨花
「居間には誰もいなくて、静かだと思います」
箱崎星梨花
「これから、居間以外の部屋も廻ってもらいます」
箱崎星梨花
「だけど、居間以外の部屋で、誰かに会っても、絶対に話しかけないでください」
箱崎星梨花
「話しかけられても、無視をしてください」
箱崎星梨花
「それがもし、死人だったとしても・・・です」
箱崎星梨花
友人達は目をつむったまま、黙って頷く・・・
箱崎星梨花
「それでは今から、貴方の好きなように、一室ずつ部屋を廻ってください」
箱崎星梨花
「ただし、自分の部屋には最後に行くようにしてください」
箱崎星梨花
そう指示を出すと、友人たちはまた、目をつむったまま黙って頷く・・・
箱崎星梨花
しばらく、沈黙が続きます
箱崎星梨花
それからひとり、またひとりと、想像での生家の訪問から友人達が帰ってきて・・・
箱崎星梨花
残りはひとり、A子だけになりました
箱崎星梨花
ただ、それから10分経っても、A子だけは目を瞑ったまま・・・
箱崎星梨花
帰ってきません
箱崎星梨花
何も言わず、じ~っと目を瞑ったまま
箱崎星梨花
わたしはそれだけA子が没頭しているのだと思ったのですが・・・
箱崎星梨花
流石に痺れを切らしたB美がA子の肩を揺らして声をかけます
箱崎星梨花
「A子!A子ってば!ねぇ、聞いてる?」
箱崎星梨花
するとA子は目をパッと見開いて・・・
箱崎星梨花
「あぁ・・・うん、きぃ・・・って聞こえて、あっ、なんでもない・・・」
箱崎星梨花
「なんか心配かけちゃってごめんね?」
箱崎星梨花
いつも元気なはずのA子は、顔を真っ青にしてそう答えると、一切口をきかなくなりました
箱崎星梨花
心配したB美やわたしが「何か見たの?」ときいてみても、首を縦に振ったきり、何も言いません
箱崎星梨花
その日はそのまま解散になり、翌日、A子は学校に来ていませんでした
箱崎星梨花
朝のHRの時間に、担任の先生が暗い顔をしながら教室へ入ってきます
箱崎星梨花
先生は開口一番こう言いました
箱崎星梨花
「A子さんが、自殺をして亡くなりました」
箱崎星梨花
その日の朝、A子の両親によって、首を吊って亡くなっているA子が発見されたようです
箱崎星梨花
A子は一体、何を見たのでしょうか?
(台詞数: 50)