女子、三日会わざれば29『信託』
BGM
MAINBGM_RMX
脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2016-10-16 22:55:05

脚本家コメント
次回、千早と封筒の中身について。

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周防桃子
貴音さんが借りてくれた練習場は、決勝戦の日まで使っていいという話だった。
周防桃子
決勝戦が予定の日から後ろにずれたのに、そうなっているってことは…。
周防桃子
桃子の見えないところで、貴音さんが動いてくれたんだ。
周防桃子
たぶん、それが貴音さんの最後の手助けのつもりなんだろう。
周防桃子
心の中でお礼を言って、桃子は練習場の中心に立つ。
周防桃子
…ここは、静かで誰もいなくて。
周防桃子
感じるものが、ただ自分だけなのが、とてもいい。
周防桃子
振り付けを一通り、試してみる。
周防桃子
その一つ一つ、そのすべてが、桃子の中にあるイメージにピッタリと合った。
周防桃子
まるで、そうと決められてたように。まるで、それがただ一つの正解であるように。
周防桃子
これが千早さんが言ってた「入り口」っていうなら、そこから奥へはどうやって行く?
周防桃子
また一通り、おさらいを終えて。自分に問いかける。
周防桃子
もっと、深く?
周防桃子
…ううん、違う。それよりは…。
周防桃子
もっと、細く。
周防桃子
でも、それだけじゃ、まだ足りない。
周防桃子
もっと…広く。
周防桃子
あっ?なんだろう、この感じ。
周防桃子
もう一度、最初からこの感覚に任せて、やってみよう。
周防桃子
……。
周防桃子
…これだ。
周防桃子
なんだ。聞いたときはむずかしそうだったけど、桃子だってできるじゃない。
周防桃子
千早さんが「一つのことに集中する」ように言ってくれたおかげだけど。
周防桃子
そういえば、こんな風に集中できたのも、本当にひさしぶりなことだったかもしれない。
周防桃子
いつもは、いろいろと考えることが多すぎるから…。
周防桃子
かちり、と時計の針が時間を進める音が聞こえた。
周防桃子
今日は、決勝戦の打ち合わせがある。
周防桃子
よし、最後の準備に行こう。
周防桃子
桃子は、タクシーを呼んで、劇場へと向かった。
周防桃子
……。
周防桃子
打ち合わせといっても、大トリの桃子は決勝戦の一曲だけなので、あまりおぼえることはない。
周防桃子
先攻後攻を決めるくじ引きがあったけど、それもすぐに終わった。
周防桃子
…桃子が先攻だった。
周防桃子
打ち合わせには、この大会の出場者が全員集められている。
周防桃子
決勝戦に進めなかった人も、それぞれステージに立って、場を盛り上げてくれるという話らしい。
周防桃子
さて、と。
周防桃子
他の準備は、ここに来るまでに、すべて終わらせてしまった。
周防桃子
そして、打ち合わせが終わったのをみて、桃子は千早さんに近づいていく。
周防桃子
手には、封筒が一つ。
周防桃子
今の打ち合わせを見て、これをあずかってもらえるのは千早さんだけだとわかったから。
周防桃子
これが、最後の準備で、最後の「作戦」。
周防桃子
千早さんは、桃子にも美希さんにも味方はしないけど、これはうまく話せばどうにかなるはず。
周防桃子
…千早さんが、桃子に気づいて、こちらを見た。
周防桃子
その目の中には、とまどいの色がある。
周防桃子
…桃子は何か変わったのかな?ううん、たしかに変わったのかもしれない。
周防桃子
でも、今はそんなことはどうでもいいように思える。
周防桃子
だれがどう思ったって、桃子はこのやり方でいくと決めたのだから。
周防桃子
「ねえ、千早さん。お願いがあるんだけど…。」
周防桃子
その言葉といっしょに、桃子は千早さんに封筒を差し出した。

(台詞数: 49)