望月杏奈
~2015年~
望月杏奈
あれから暫く経って杏奈は高等部にそのまま進級した
望月杏奈
美奈子さんと奈緒さんの二人はあの後も何度か向こうから杏奈に話しかけにきてくれたけど
望月杏奈
杏奈が心を開く事はなかった…
望月杏奈
最後に話をした時の事によると、二人とも同じ大学に通うことになったみたいだけど…
望月杏奈
話を戻すと、やはりこの季節は新入生が入って来るから
望月杏奈
騒がしい…
望月杏奈
通学路の桜並木が初々しい彼女達の笑顔をより際立たせる様に
望月杏奈
そう
望月杏奈
世間では春がやってきたのだ
望月杏奈
ただ、杏奈にとっては違った
望月杏奈
あの日から杏奈の時間は止まっているから
望月杏奈
終りの見えない暗い冬の世界に杏奈だけは取り残されているから
望月杏奈
学校につくと中等部の頃と同じような退屈な1日がはじまる
望月杏奈
放課後になるまでに杏奈は他所から新しく入ってきた子達に話しかけられた
望月杏奈
杏奈と仲良くしたそうだったけど…
望月杏奈
杏奈には友達なんて必要ないから…
望月杏奈
そう呟くと、話しかけてこなくなった
望月杏奈
何かを言われたような気がしたけど、杏奈には何を言ってるかわからなかったし
望月杏奈
興味がなかった
望月杏奈
~放課後~
望月杏奈
杏奈がぼーっと廊下を歩いてたら
望月杏奈
誰かにぶつかってしまった
望月杏奈
杏奈はごめんなさいと小さく呟いてからその場を去った
箱崎星梨花
あのぅ、すみません…
望月杏奈
…(下駄箱から靴を取りだし中)
箱崎星梨花
あのっ!!望月杏奈さんですかっ!?
望月杏奈
ガタンッ
望月杏奈
…急に後ろから大きな声を出されたから軽く鞭打ちになった…
望月杏奈
そうだけど…なに?
箱崎星梨花
大事なお手紙、落としてますよ!
望月杏奈
…名前も知らないその子は、目をキラキラ輝かせながら百合子からの手紙を差し出して来る
望月杏奈
…さっきぶつかったとき落としたのかな、杏奈は受け取りながらそう思った
望月杏奈
…手紙は落とさないように鞄に大事にしまった
望月杏奈
その…ありがと
箱崎星梨花
えへへ…どういたしまして!!
箱崎星梨花
あの、わたし、中等部の箱崎星梨花って言います!!
望月杏奈
…その子は眩しいほどの笑顔を杏奈に振り撒きながら
望月杏奈
…杏奈に握手を求めるように元気一杯にその小さな手を杏奈に伸ばしてきた
望月杏奈
…その子から差し出された手は
望月杏奈
…かつての百合子を彷彿させるには十分だった
(台詞数: 41)