如月千早
..確かこの時はアリーナライブ後、私が海外レコーディングをしていた時の話
如月千早
日本に帰国し、事務所へ向かう途中、あるフェス会場でライブを聴いていた。
如月千早
どの人も楽しそうに、生き生きと歌っている...自然とこちらも笑顔になった。
黒井社長
?「...いい笑顔です。 ところで...私ちょっと遊んで頂けませんか?」(イケボ)
如月千早
「...そのセリフを言ったの...今日、私を含めて何人目ですか?」
黒井社長
?「ん~、今日は好みの子にあんまり会ってないから4人目かな?」
如月千早
『夏木透』...4916プロの社長の息子でプロデューサーをしている男性。
如月千早
...この人は私の海外レコーディングに律子や音無さんの代わりに同行してくれた人。
如月千早
見ての通り、大の女好きであり、自由奔放。 そもそもここに寄ったのもこの人の都合。
黒井社長
透「やっぱり今年はあんまりだなぁ...何ていうか、モノ足りないんだよな」
如月千早
私の中ではどの参加者もレベルが高いと感じていた...その理由を一応聞いてみた
如月千早
「物足りない...とは一体どういうことなんでしょうか?」
黒井社長
─ん~、と言いながら髪をぐしゃぐしゃと掻く...悩んだ時の彼のクセだ。─
黒井社長
透「なんつぅかさ...あまりにも基礎に忠実過ぎなんだよな。 気に食わないなぁ。」
如月千早
「気に食うも食わないも、基礎に忠実なのはむしろいいことだと思うのですが。」
如月千早
私は今までの努力を否定されたような気がして、少し強い言い方で夏木さんに言った
黒井社長
透「あー...うん、ちーちゃんならそう言ったって当然だよな...うん。」
黒井社長
透「別に基礎を否定する気はないさ、ただそれだけじゃダメってワケ。」
黒井社長
透「歌手にだって感情表現とかそういうの、あるだろ? それがあまりにもヒドイってこと。」
黒井社長
透「...ロックってのはね、反社会って意味がこめられてて、だからこそソレが重要なのさ。」
如月千早
「なるほど...ですが、私としては楽しそうな表情が見えたんですが...。」
黒井社長
透「うん、それは大事よ。 だけどね俺の考えてることとは少し...」
黒井社長
透「...っと、一時中断ね。 この演奏だけ聴いたら765プロに送るからさ。」
如月千早
そういうと夏木さんはステージの方へ目を向けた...男女二人組のバンドみたい。
黒井社長
透「ほぇ~、さしずめ中学生か...どれほどか見せてもらおうかな♪」
如月千早
そして演奏が始まった...正直に言って、他の団体と比べてもかなり演奏が上手。
如月千早
無駄のない音の運びとテクニック...相当の練習を積んだのだろう...
如月千早
しかし、ある時から会場の空気が少しずつ変化していることに気がついた。
如月千早
歓声で騒がしかった会場が少しずつ静かになっていく...ギターの演奏がより響き渡る
黒井社長
透「...」
如月千早
いや...会場全体が『演奏に飲まれていってる』...という感覚が近い気がする...
如月千早
...時間はあっという間に過ぎ、演奏は終わった。 ギャラリーは呆気にとられてるようだった。
如月千早
「なんなの...あの子...。」
如月千早
少年は...私たちが今まで見たこともない程、乱暴でワガママで、楽しそうな表情をしていた
黒井社長
透「...」
黒井社長
透「...いや~コイツは面白いの見つけちまったよ!!」
黒井社長
透「圧倒的なパフォーマンス、才能、そして歳に似合わないカリスマ性...すっげ~♪」
黒井社長
透「あのガキ欲しいな...もっとこの業界も面白くしてくれるかもしれねぇし...。」
如月千早
夏木さんはいつもと違う様子で、少し嬉しそうに笑い、そうつぶやいていた。
如月千早
私にはそのつぶやきが何か壮大なことを考えているような...そんな気がしてならなかった。
如月千早
...前に聞いた話だと夏木さんには、他の人とは違う特別な力があるらしい...
如月千早
『流れを見る力』と『その未来へと人を連れていく力』...それが彼の特別な才能らしい。
如月千早
事実、彼の周りにはたくさんの人が集まる...その人たちは夏木さんをすごく信頼していた。
如月千早
未来の流れというのは、私にはよくわからないけれど...これだけはわかる。
黒井社長
─夏木透という人物は...私たちとは『全く違う世界が見ることができる』ということ...。─
黒井社長
透「あっ!?あのチビッコ見つけた! ちーちゃん、ちょっと待っててね!」
如月千早
...私たちにはどんな未来が待ち受けているのだろうか...私たちには知る方法はない。
黒井社長
透「やあ少年、ちょっと話があるんだけど...いいかい?」
黒井社長
─むしろその未来は今よりももっと過酷で、辛いものなのかもしれない...それでも、─
如月千早
私は今、目の前にあることを一生懸命頑張る...それが未来を作るのかもしれないから。
(台詞数: 50)