横山奈緒
「………何か判ったか?」
野々原茜
「いやー、全然ダメだね。入隊以前の経歴、恐らくぜーんぶ嘘っぱちだよこりゃ。」
横山奈緒
「……根拠は?」
野々原茜
「大学時代の所属ゼミ、成績、卒論、データは有るけど教授も同期ゼミ生も、」
野々原茜
「口を揃えて『そんな人物は知らない』、だよ。論文もこれ多分、既出のそのまんまコピーだよ。」
横山奈緒
「……隠す気も無いっちう事か。」
野々原茜
「多分ね。そんで大学卒業後に【ニムロッド・ホールディングス】入社。」
横山奈緒
「それを一年で退社して入隊、三沢基地に配属、今に至る……か。」
野々原茜
「入隊時には何故か既に持ってるパイロットライセンス。そして防衛大卒でも無いのに、」
野々原茜
「いきなり第3飛行隊配属、しかも戦闘機乗りとして。ちょっと有り得ないよね。」
横山奈緒
「……貴音さんはどないなってん?見つからんのか?携帯も繋らへんし。」
野々原茜
「携帯は解約しちゃってるよ。除隊後の住所不明、ネット上のアドレスやらアクセス履歴やら」
野々原茜
「ぜーんぶ跡形も無く、綺麗さっぱり無くなっちゃってるよ。」
横山奈緒
それが意味する所は、
横山奈緒
彼女はただ【辞めた】のではなく、
横山奈緒
【失踪】した、という事だ。
福田のり子
「お疲れさーん、戻りましたよーっと。」
横山奈緒
「お疲れさん。新型機はどやった?」
福田のり子
「いやー、ありゃとんでもないじゃじゃ馬だよ。でかい図体でくるくる回るけど、」
福田のり子
「その分恐ろしく不安定。志保は今までよくあんなので戦績上げてたよ。」
横山奈緒
「……そりゃま、志保の為に設計した様なモンやからな。」
横山奈緒
「………まこりんは、どないやった?」
福田のり子
「いや、あの子も何かオカシイよ?なんであんな機動がとれるのさ?」
横山奈緒
「あんなって、どないな機動や?」
福田のり子
「うーん、なんて言ったらいいのか……、勘が鋭い?いや、勘ってレベルじゃあないなあ。」
福田のり子
「相手の行動を先読みしてるみたいにさ、最小の機動で後ろを取ってくるのさ。」
福田のり子
「まるで心を読めるみたいに……。」
横山奈緒
「……いずれにしても、想定外が多過ぎや。今のままじゃ下手に身動き取れへん。」
横山奈緒
「茜は引き続いて、データ集め頼むわ。どんな些細なんでもかめへんから。」
横山奈緒
「のり子は三沢の隊員に知り合い居ったやろ。そのツテ当たってくれるか?」
福田のり子
「うーん、貴音さんと関わり有ったか分からないけど、駄目元で聞いてみるよ。」
野々原茜
「分かったよ。んで、横ちゃんはどうすんのさ?」
横山奈緒
「ちょいと風花さんに外出許可貰って来るわ。」
横山奈緒
「明日明後日、席はずすわ。その間のり子、よろしゅう頼むわ。」
福田のり子
「え、良いけど……どこ行って来るのさ?」
横山奈緒
「……………お見舞い、行って来るわ。」
横山奈緒
「千鶴さん所に。」
(台詞数: 37)