
野々原茜
「ん、んん…ん~にゃ~っ!」

野々原茜
ぐぐっと背伸びをして、辺りを見渡す。

野々原茜
と、いつもの自分の部屋じゃ無い、知らないベッドで寝ていたことに気づいてビックリする。

野々原茜
「あれ!?ここは…?茜ちゃんの身に何があったの?」

野々原茜
目をぱしぱしとしばたかせると、もう一度辺りを見直す。

野々原茜
そうしている内に、自分がどこにいるのかがだんだんと分かってきた。

野々原茜
「ここは…テレビ局の医務室?なんでこんな所に?」

野々原茜
消毒液の匂いが鼻につく。そのおかげかは知らないけれど、自分に何があったのか思い出した。

野々原茜
「そっか、茜ちゃん…」

野々原茜
──収録が終わった直後に倒れたんだった。

野々原茜
思えば、最近お仕事が楽しすぎた。

野々原茜
その結果、茜ちゃんの体に限界以上の負荷がかかっていたみたいで。

野々原茜
それがここに来て限界を迎えたらしい。

野々原茜
収録中に倒れなかったのは完璧可愛い茜ちゃんのなせる妙技だと思う。

野々原茜
さて、茜ちゃんが置かれている状況はよ~く分かった。

野々原茜
問題はこれからどうするか、だけど…。

野々原茜
「勝手に帰っちゃって良いのかな?」

野々原茜
ベッドの下には茜ちゃんの靴が揃えて置いてあった。

野々原茜
靴を履いて立ち上がる…と、少しくらっときてベッドに座り込んでしまう。

野々原茜
「もう少し休んだ方が良いかもなー?」

野々原茜
ベッドの縁に腰掛けたまま、足をぶらぶらさせる。

野々原茜
そうしていると、扉が乱暴に開けられた。びっくりして扉の方を向くと…。

野々原茜
「ぷ、プロちゃん!?そんな汗だくでどうしたの?」

野々原茜
スーツが乱れ、髪があらぶってるプロちゃんがいた。肩で息をしている。

野々原茜
プロちゃんは息を整えることもせずに自分をじっと見て…。

野々原茜
何かを安堵したのか、ふぅと息をついた。

野々原茜
「なになに~?茜ちゃんにそんなに会いたかったの?も~、プロちゃんは甘えん坊だね!」

野々原茜
いつもの調子で言うと、プロちゃんはこっちに近づいてきた。そのまま…。

野々原茜
「茜ちゃんもプロちゃんに会いたかったんだよわぶっ!?」

野々原茜
突然、プロちゃんに抱きしめられた。

野々原茜
「ちょっと!茜ちゃんに抱きつきたいくらいに恋い焦がれてたの?プロちゃんってば?」

野々原茜
ぎゅっと抱きしめながら、頭をなでてくる。そのまま、プロちゃんの口から謝罪の言葉が聞こえた。

野々原茜
「プロちゃん?プロちゃんは何で謝ってるの?」

野々原茜
全部、自分が走りすぎた事が原因なのに。

野々原茜
頭をなでながらプロちゃんは、怒ったりせず、ただただ謝り続けた。

野々原茜
この人はアイドルに甘すぎる。その上、大切にしすぎる。

野々原茜
その優しすぎる人が頭をなで続けるおかげで…。

野々原茜
「も、もうっ、プロちゃん、そろそろ止め…て。じゃないと茜ちゃん…」

野々原茜
「ぐすっ、ふええええぇぇぇぇん…」

野々原茜
大切にされて嬉しくて、心配させたことが情けなくて、茜ちゃんの目から大粒の涙が零れた。

野々原茜
──────────。

野々原茜
「ん?まだ休んでなくてもいいのかって?」

野々原茜
「茜ちゃんはもう絶好調だよ?ほら!大好きなスキップも出来ちゃう♪」

野々原茜
プロちゃんの前でピョンピョンと跳ねてみせる。今日倒れた人間とは思えないくらい元気だ。

野々原茜
ひとしきり泣いた後、プロちゃんに、もう無理はするなってこっぴどく怒られた。

野々原茜
怒られてもただでは起き上がらないのがこの茜ちゃん。

野々原茜
無理はしない代わりに、約束を一つ結ぶことにした。

野々原茜
元気であることを見せ付けるように、スキップでプロちゃんよりもちょっと先に進むと。

野々原茜
くるっと身を翻してプロちゃんの方を向き直すと最強最大の笑顔で言った。

野々原茜
「プロちゃんはこの茜ちゃんの事、ず~っと見てなきゃ駄目だよ!約束だからね♪」
(台詞数: 50)