周防桃子
今日は…美希さんと千早さんの試合の日。
周防桃子
練習を早めに切り上げて、桃子はライブバトル会場にやってきた。
周防桃子
会場は小ホールでも、たしか500人くらいは入るから、後ろの方はガラガラ。
周防桃子
そして、空いた席には、桃子と同じように見学に来ている人たちがすわっている。
周防桃子
静香さんや琴葉さんのような出場者もいるし、それ以外の人もいた。
周防桃子
桃子も適当な席を見つけてすわり、ステージの方を見すえて。
周防桃子
さて、と。そろそろ始まるかな?
周防桃子
あれから桃子もたくさん練習して、レベルアップしてきたつもり。
周防桃子
まだ美希さんや千早さんに勝てるとは思わないけど、今日勝った方と戦うのは、早くても準決勝。
周防桃子
今は力の差があっても、その時までには追いついてやるんだから!
周防桃子
今日来たのは、あくまで対戦相手がどっちになるかの確認ってだけ。
周防桃子
…うん。それだけ。
如月千早
「…。」
周防桃子
千早さんが出てきた…!
周防桃子
ステージの袖から、千早さんはゆっくり歩いてステージの中央へ。
周防桃子
そして、正面を向いて、マイクを手に…。
如月千早
「皆さん。今日は、私たちのために集まってくれて、ありがとうございます。」
如月千早
「今回の企画は、765プロ同士のアイドルの対戦ということですが…。」
周防桃子
…千早さんは、微笑んで。
如月千早
「こうして、自分の力を試すこと、切磋琢磨できること、想いをぶつけあうこと。」
如月千早
「この機会を与えてくれたすべての人に、感謝します。」
如月千早
「私がこれから歌う歌を…皆さんと、今日の対戦相手である美希に捧げます。」
如月千早
「ありのままの私。そして、今の私の全てを、この歌に。」
如月千早
「聞いてください…『Just be myself!!』!」
周防桃子
イントロ、そして。
如月千早
『かみしめた昨日は 私であるための証』
周防桃子
音の圧力。この小さなホールではおさえきれないほどの。
如月千早
『無限ループの毎日 きっと今日こそ ひとつ抜け出せる』
周防桃子
それは、たしかに圧力なのに、体に、そして心にしみこんでいくようで。
如月千早
『Just be myself!! 信じたい 手探りの勇気を 本当の自分を』
如月千早
『全力で未完成な明日へ なりたい私になる!』
周防桃子
…ああ、これが、千早さん。765プロの歌姫。
如月千早
『Just be myself!! 奏でたい ありふれた奇跡を 最高の自分を』
如月千早
『とびきり進化形の夢 なりたい私であれ!』
周防桃子
遠いステージの上なのに、まるで目の前にいるようにわかる。
周防桃子
なんて、なんて楽しそうに歌うんだろう。
周防桃子
弱さを乗り越える強さ。悲しみを包み込むやさしさ。不安を打ち消す自信。
周防桃子
変わっていくことを恐れない勇気と、変わっていくことに対する喜び。そして希望。
周防桃子
それらが合わさった楽しみが、心に伝わってくる…!!
周防桃子
…ああ、この歌が、千早さんなんだ。
如月千早
『いこうありのままで ずっとずっと Just be myself―!!』
如月千早
「…。」
周防桃子
…歌が終わって。
周防桃子
歓声も、拍手も無い。みんな、さっきまでの歌にしびれてしまっていた。
周防桃子
千早さんが、客席に向かって一礼した。
周防桃子
ようやく。それでようやく、言葉をなくしていた観客が、歌の終わりを知って。
周防桃子
小さなホールに、割れんばかりの拍手と歓声が、わき起こった。
(台詞数: 47)