七尾百合子
「(しまった…!)」
七尾百合子
日の光が会場を照らし出す…
七尾百合子
『ぎゃあああああああああああああああ!!!!!』
七尾百合子
会場のどこかで悲鳴が聞こえた。
黒井社長
『ユリ!(バッ)』
七尾百合子
咄嗟にPさんが纏っていた黒衣で私を覆い隠し会場の隅へと押し込んでくれた。
七尾百合子
「あっつっ!」
七尾百合子
それでも覆いきれなかった部分は日の光で焼かれてしまった。
七尾百合子
「Pさん…ごめんなさ…!?」
七尾百合子
Pさんの背中が思いっきり焼かれていることに私は気づいた。
七尾百合子
「あの…もしかしてPさんも…」
七尾百合子
何かを言おうとした私の口を人差し指で抑えしゃべることをやめさせた。
黒井社長
『詳しいことはまた後でな。とりあえずここを離れたほうがいいだろう。』
七尾百合子
会場中が騒めいている。当然だろう、ほとんどいないと思われた吸血鬼が現れたのだから。
望月杏奈
『ユリちゃん大丈夫!?』
七尾百合子
アンちゃんが心配そうに近づいてきた。
七尾百合子
「(ドクン…)うっ…」
七尾百合子
私の中にいる何かが叫んでいる…このままだと…
七尾百合子
「(ダッ)」
望月杏奈
『ユリちゃん!?』
七尾百合子
怖かった…アンちゃんに私の正体がばれるのが怖かった…
七尾百合子
無我夢中で走り続けた。
七尾百合子
一体どこまで走ったんだろうか…
七尾百合子
「(ドクン…)(ドクン…)うぅ……」
七尾百合子
胸が苦しい…
七尾百合子
何かが…私の中に潜む何かが……暴れようとしている…
七尾百合子
頭の中もぐるぐるする。何も考えられない。
七尾百合子
体の中で何かを欲している。
七尾百合子
それが何なのかわかるまでそう時間はかからなかった。なぜなら…
黒井社長
「あの…大丈夫ですか?」
七尾百合子
誰かが声をかけてきた。
七尾百合子
「(ドックン…)」
七尾百合子
人の…声……
七尾百合子
「……あはぁ♡」
七尾百合子
「美味しそうな…」
七尾百合子
「美味しそうな…人間だぁ♡」
七尾百合子
考えるよりも先に行動に出ていた。
七尾百合子
私は、声をかけてきた人間の血を吸って吸って、吸い尽くした。
七尾百合子
「ぷはぁ…」
七尾百合子
「あはは!まずは……一人目♡」
七尾百合子
もう何も考えられなかった。恐らく私の体は私の中に眠っていた本当の吸血鬼に…
七尾百合子
その時だった…
望月杏奈
『ユリちゃん…』
七尾百合子
その声に私は自分を取り戻した。
七尾百合子
それと同時に、一番知られたくない人に私の正体を知られてしまったのだった。
(台詞数: 45)