七尾百合子
「あ、モンスターパンダー」
望月杏奈
杏奈のゲーム画面を覗き込んでのひと言。
望月杏奈
気になってるけどまだ買えてないんだ。そう言って百合子さんは笑う。
望月杏奈
「楽しい、よ」
望月杏奈
百合子さんにも見えるように少し傾けてのプレイ。
望月杏奈
ちょっと見づらいけど、楽しさのおすそ分け。
望月杏奈
「これを、こうして」
七尾百合子
「えっ、今のすごい!」
望月杏奈
難なくクリア。まだ序盤だもんね。
望月杏奈
興奮冷めやらぬ感じでぴょんぴょんしてる百合子さん。
望月杏奈
暗転した画面。
望月杏奈
百合子さんのキラキラした顔が映って、反射的に目をそらしてしまう。
望月杏奈
窓を街灯が流れる。
望月杏奈
道沿いの家からオレンジの光が漏れてて、小さな子が横切っていく。
望月杏奈
申し訳なさそうなプロデューサーさんに見送られて、ふたりで乗ったタクシー。
望月杏奈
お仕事帰りなのに遠足みたいで、なんだかわくわく。
望月杏奈
しばらくゲームの話をして、ふっと会話が途切れる。
望月杏奈
そんなとき、百合子さんはニコニコと前を向いてから、静かに本を取り出すんだ。
望月杏奈
それを見届けた杏奈も自分の画面に集中する。
望月杏奈
百合子さんはゲームも好きだけど、本を読むのも好き。
望月杏奈
無理に杏奈に合わせてゲームをしないし、杏奈もそれを咎めない。
望月杏奈
でも、無視してるわけじゃなくて。
望月杏奈
例えば杏奈が寝落ちしたとき、気付くとタオルケットがかけられてる。
望月杏奈
逆に百合子さんが寝ちゃったときは、そっとしおりを挟んだり。
望月杏奈
理解してくれる人が隣にいるから、杏奈は安心できるんです。
望月杏奈
……百合子さんも同じ気持ちでいてくれてるかな。
望月杏奈
静かに揺れるタクシー。
望月杏奈
杏奈たちはそれぞれの家に運ばれていく。
望月杏奈
ふと見ると、百合子さんは本を閉じて斜め上、遠くの空を眺めている。
望月杏奈
余韻に浸ってるのかな、なんて考えてると。
七尾百合子
「杏奈ちゃん」
七尾百合子
「ぎもぢわるい……」
望月杏奈
まったく、もう。
望月杏奈
百合子さんは世話が焼ける。
(台詞数: 34)