望月杏奈
お客さん、だ……。
二階堂千鶴
えっ?
二階堂千鶴
あ、あら、ようこそ。いらっしゃいませ。
二階堂千鶴
席、ですか?
二階堂千鶴
ご覧の通り、全て空席ですわ。
二階堂千鶴
ですので、どうぞお好きな所へお掛けになってくださいな。
二階堂千鶴
……どうかなさいました?
二階堂千鶴
空きが有るように見えない? これは異な事を仰るのですね。
望月杏奈
……ふふ。
二階堂千鶴
ここにはわたくしと、お手伝いの杏奈……それに、お客様の3人しかおりませんよ。
望月杏奈
お兄さん……疲れてるの、かな……?
二階堂千鶴
そうですわね。少々、お疲れなのかもしれません。
二階堂千鶴
たまには、ゆったりと弦楽の調べに耳を傾けてみるのも悪くありませんことよ。
二階堂千鶴
音楽は心を癒やしてくれますわ。
二階堂千鶴
実は店内の薄暗い照明も、より深く曲に心酔できるよう計らわれているんですの。
二階堂千鶴
目まぐるしく過ぎる現実を過ごすのは辛いでしょう?
二階堂千鶴
ここは、そんなお客様に一時の安らぎを得ていただく為のカフェなんですのよ。
望月杏奈
……もしかして。
望月杏奈
うるさいの、かな……?
二階堂千鶴
ん? ああ、それでしたら。
二階堂千鶴
杏奈。
望月杏奈
うん……。
望月杏奈
お兄さん……。お兄さんは、今流れてる曲、知ってる……?
望月杏奈
有名な曲、なんだって……。杏奈は知らなくて、最近好きになったの……。
望月杏奈
ほら、目を閉じて……聴いてみて?
望月杏奈
……不思議と、心が落ち着いてくるんだよ?
望月杏奈
……。
望月杏奈
…………。
望月杏奈
ね……?
二階堂千鶴
どうなさいました? 随分と怪訝な表情をされてますのね。
二階堂千鶴
お客様以外のお客様……。はて、何の事やら。
望月杏奈
だって、あんなにいっぱい……? ふふ……。
望月杏奈
ここには……そんなに、いないよ……?
二階堂千鶴
さ、いつまでも立ちっぱなしでは疲れますでしょう。
二階堂千鶴
どうぞ。カウンターの席にお掛けくださいな。
二階堂千鶴
────
二階堂千鶴
成る程。突然の雨に見舞われて、こちらにいらっしゃったのですね。
望月杏奈
雨……好き。お外に匂い、嗅ぎに行く……。
二階堂千鶴
仕事中ですわよ。
望月杏奈
むぅ……。
二階堂千鶴
しかし、外は雨ですか。道理で騒がしかったわけですわね。
二階堂千鶴
……こちらの話ですの。
望月杏奈
お兄さん……。雨、好き?
望月杏奈
雨が好きな人は、ね……このお店、好きになるんだよ?
望月杏奈
何で、なのかな……?
二階堂千鶴
……はぁ。
二階堂千鶴
これから憂鬱ですわ。
(台詞数: 47)