如月千早
出なかった…
如月千早
もう一度、やってみようと思えたのに…
如月千早
皆のつくってくれた歌詞と、優の絵を見た時…
如月千早
歌いたいって思えたのに…
如月千早
笑えるのか、歌えるようになるのかもわからないけれど…
如月千早
正直怖い、それでも一歩を踏み出そうとした。
如月千早
でも、いざステージの上に立って、メロディーが流れだした途端…
如月千早
私の意思に反して、声は出なかった。
如月千早
心地よいはずのメロディーはあの忌々しい車の音に聞こえてくる。
如月千早
ファンのみんなが振っているサイリウムは、宙に舞った弟の靴に見えてしまう。
如月千早
脳裏に焼き付いた優の笑顔。
如月千早
それを守れなかった罪悪感。
如月千早
あの時動けなかった自責の念。
如月千早
本当は寂しかった。
如月千早
けれど、そんなことを想っていられる余裕なんてなかった、想ってはいけないと思った。
如月千早
だから私は私を追い込んだ。
如月千早
歌わなくちゃ、歌わないといけない…
如月千早
そうしないと優が寂しがる。
如月千早
全ては優の為にって…
如月千早
自分の心を偽ってまで、私はそうした。
如月千早
偽ったから、いつの間にか私は空っぽになっていた。
如月千早
空っぽの私に、音色を生みだすことなんてできない。
如月千早
心を込めて歌えるはずがない…
如月千早
やっぱり…
如月千早
やっぱりもう…
如月千早
春香「ねぇ、いま~、みつめーているよ~はーなれていてーも♪」
如月千早
「はるか…?」
如月千早
空っぽになった私の中に赤の音色が触れる。
如月千早
すると続くように黒の音色、黄緑の音色。
如月千早
橙の音色、白の音色。
如月千早
鴇の音色、紫の音色、黄の音色。
如月千早
似てる黄の音色、浅葱の音色、臙脂の音色。
如月千早
それらが私の中に入り込んで、私の深くに触れて、混ざって満たされていく。
如月千早
なんて温かいんでしょうか。
如月千早
それは、みんなが今、私に悲しみを乗り越える力をくれようとしている象徴。
如月千早
一人では踏み出せない私の背中を押そうとしてくれている。
如月千早
ううん、寧ろ飛び立たせてくれようとしている。
如月千早
そんな私の目の前に、優と、小さな私がいる。
如月千早
握って、と言わんばかりに手を差し伸べる小さな私。
如月千早
それは、私が見失ってしまった、私の心。
如月千早
私は小さく頷くと、その手を取った。
如月千早
その時、繋がる私の心と音色。
如月千早
それは私に翼を与えてくれた。
如月千早
どこまでも、どこまでも自由に羽ばたくことのできる翼を…
如月千早
「歩こう~♪」
如月千早
「果てない道~♪」
如月千早
「歌おう~♪」
如月千早
歌が、私を解き放ってくれる。果てのない青い空へ…。
如月千早
振り向かずにどこまでも飛んでいった先に待っているのは…
如月千早
誰、なのでしょうか?
(台詞数: 50)