家族になるということ
BGM
TOWN_RMX
脚本家
CRバルスP@禁酒中
投稿日時
2016-07-18 23:08:15

脚本家コメント
普段変態765プロ劇場ばかり書いている私ですが、たまには心温まる人情味に満ちた話を書きたいなって思いました。

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七尾百合子
昔々ある所に、ロコちゃんという名の貧しい少女がいました。
七尾百合子
毎日毎日身の回りの物を売っては、その日の食い扶持を稼いできました。
七尾百合子
しかしある日、ついに売れる物が何も無くなってしまいました。
ロコ
寒い…もう、食べる物も着る物も、マイホームもありません。
七尾百合子
雪の中、ロコちゃんはふらふらと歩き続け、とうとう力尽きてしまいました。
ロコ
ロコ…ここで…デッドエンドですか…?
望月杏奈
そこの貴女…大丈夫…?
七尾百合子
そんな時、ロコちゃんの目の前に一人の女の子が現れました。名前は望月杏奈ちゃんと言います。
望月杏奈
行く当てがないなら…うちに来るといい、よ…。
七尾百合子
そう言うと杏奈ちゃんは、ロコちゃんをお家に招待しました。
望月杏奈
一人暮らしの、寂しい家だから…遠慮せずに、どうぞ。
望月杏奈
まずはお風呂、かな…。その後は…ご飯に、しよう…ね。
ロコ
お風呂…いいんですか…?
望月杏奈
だから遠慮しないで…ね?
七尾百合子
数日ぶりに体を洗いながら、数年ぶりにお湯を浴びながら、ロコちゃんは思いました。
七尾百合子
「どうしてこの人は、こんなにも自分に親切にしてくれるのか?」と。
望月杏奈
あ。お風呂…上がったんだね…。晩ご飯、出来てるよ…。
ロコ
あの…どうして、こんなにもロコに親切にしてくれるんですか?
ロコ
ロコは、見ず知らずの他人なのに、それなのに…。
望月杏奈
杏奈もね、寂しかったんだ…。故郷を離れて、ここで一人暮らしして…。
望月杏奈
お金はあるけれど…寂しいって気持ちは…埋められないの…。
望月杏奈
だから、今こうして…貴女とご飯を食べられるのが、とっても嬉しいの…。
望月杏奈
さあ、冷めないうちに…食べよ?
ロコ
……いただきます!
七尾百合子
暖かい家、温かいお風呂、美味しいご飯。それは、ロコちゃんが経験した事のないものでした。
七尾百合子
ご飯を食べている間も、ベッドで眠る時も、ロコちゃんは嬉しい気持ちで泣き続けました。
七尾百合子
その日から、ロコちゃんの生活は一変しました。
望月杏奈
これ、ロコにもわかるような…簡単な本だから…読んでみて…。
ロコ
はい!サンキューです!
七尾百合子
学校に行った事のないロコちゃんに、杏奈ちゃんは読み書きを教えてくれました。
望月杏奈
ロコ。どこか、行ってみたい場所はない…?
ロコ
アンナが行きたいところなら、どこでもいいですよ!
望月杏奈
…そう?じゃあ…映画館に行こうか…。
七尾百合子
平日は家で一人ぼっちのロコちゃんを、休日は遊びに連れて行ってくれました。
七尾百合子
映画や遊園地、レストランに喫茶店。これまでロコちゃんが行った事の無い場所ばかり。
七尾百合子
ロコちゃんにとって、それは夢のような生活でした。
七尾百合子
しかし、杏奈ちゃんには一つ気がかりなことがありました。
七尾百合子
ロコちゃんが、一度もおねだりをしないのです。
七尾百合子
ロコちゃんと家族になりたい杏奈ちゃんは、ロコちゃんの望む事をしてあげたいのです。
七尾百合子
そこである日、杏奈ちゃんはロコちゃんに聞いてみることにしました。
望月杏奈
ロコ…貴女が、杏奈に対して…恩を感じて…遠慮しているのは、知ってるよ…。
望月杏奈
でもね…杏奈は、ロコと家族になりたいの…。家族は…そんな、遠慮をしないの…。
望月杏奈
だから、ロコの欲しい物、食べたい物、行きたい場所…そういうの、杏奈に教えてほしいの。
望月杏奈
ロコは杏奈に…暖かい気持ちをくれたから…杏奈も、ロコにお返ししたいんだよ…。
ロコ
アンナ…。そんな風に思ってもらえて、ロコ、とってもハッピーです!
ロコ
それじゃあ一つだけ…欲しい物をお願いしてもいいですか?
望月杏奈
いいよ。何でも言って…?
七尾百合子
笑顔で答える杏奈ちゃんに、ロコちゃんはこう言いました。
ロコ
そろそろ着る物をください。

(台詞数: 49)