愛灯撤月
BGM
風花
脚本家
Կիշիրա
投稿日時
2016-06-10 04:17:00

脚本家コメント
ちょっと前に書いたドラマ続きです。
立ち絵の完璧な笑顔の割に内容は暗い!

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二階堂千鶴
あら、ここに居らっしゃったんですね。
望月杏奈
……
二階堂千鶴
そろそろ朝ご飯の支度が出来てますわ。
望月杏奈
……
二階堂千鶴
……ここの生活には慣れましたか?
望月杏奈
……
二階堂千鶴
あの子の事を、考えているのですか?
望月杏奈
……
二階堂千鶴
わたくし達は夜に生きています。勿論あの子もそうでした。
二階堂千鶴
まあ、あの子の場合は少し甘いというか……少しあれなところがありましたが。
二階堂千鶴
とにかく、そんな常世の生活では、こういう事もあると、割り切らなければなりません。
二階堂千鶴
現にあなたも、そういう事をしてきたのでしょう?
望月杏奈
……
二階堂千鶴
この木は、私やあの子が生まれる前から、ここに在ります。
二階堂千鶴
あなたも既に見たことがおありでしょうが、夜の方が綺麗なんですよ。
二階堂千鶴
ですから私達の間では、遠くの同胞を想う時はこの木に祈る事になっているのですよ。
二階堂千鶴
きっとあの子も、ここに居ます。
望月杏奈
……
望月杏奈
……!!!
二階堂千鶴
それはなりません。もうあそこは相手の場所です。もう二度と戻ることは許されません。
望月杏奈
……?
二階堂千鶴
相手、とは。わたくし達以外の人の事ですよ。ですから兎さん。
二階堂千鶴
あなたが今しようとしている事を、わたくし達は決して許可しません。
二階堂千鶴
わたくし達は闇という仕組みの一部でしかありません。そんな所で唐突に人の情を出すのは……
二階堂千鶴
……考えることすら許されません。
二階堂千鶴
あの子がああなったのは甘かったから、とは言いませんが。今あなたの上に居るのはわたくしです。
二階堂千鶴
要するに、勝手なことをするなという事です。
望月杏奈
……
二階堂千鶴
ふう、少しきつい言い方でしたが、以前からあの子に頼まれていたのです。
二階堂千鶴
他でもない。兎の命を守るようにと。
望月杏奈
……
二階堂千鶴
そういえば、こうも言っていましたわ。
二階堂千鶴
兎さんは本当に兎ではないかと思うくらい無口だと。
望月杏奈
……
二階堂千鶴
そして、心までそうなってはいけないと。
望月杏奈
……
二階堂千鶴
短い付き合いですが、あなたの言語が少し分かってきましたわ。
二階堂千鶴
わたくしも、あの子と同じ気持ちです。
二階堂千鶴
ですから、言っておきます。
二階堂千鶴
あなたにとっての灯籠も月も、神の元では全て同じ価値であるのです。
二階堂千鶴
ただ、無数にある光の中でどれが最も輝いているかは人によって違うのです。
二階堂千鶴
ですから、兎さん。わたくし達が行っていることは……
二階堂千鶴
ただ一つの灯りの為に、月を隠してしまう事と同じなのですよ。
望月杏奈
……
望月杏奈
鬼を祓っている内に、私が鬼になってしまった。
望月杏奈
仇を討っている内に、誰かの仇になってしまった。
望月杏奈
それは分かっていた。それで消えてしまうなら、それを受け入れる準備は出来ていた。
望月杏奈
……私が、日の光を諦めきれなかったから。まだ人に未練があったから。
望月杏奈
闇の中で、また大切な人を作ってしまった。そしてまた、失ってしまった。
望月杏奈
辺りを射す日差しの下、私の中で、夜だけが残った。

(台詞数: 50)