舞台袖から見送るその背中を忘れはしない
BGM
VIVID イマジネーション
脚本家
ちゃん@春の日
投稿日時
2016-05-31 19:46:12

脚本家コメント
※P視点です。
杏奈ちゃんお誕生日記念日ドラマになります。
杏奈「…聞こえる、ね…全国の…みんなの、声…。みんなの、想い…。…杏奈…これからも、頑張る…から…。…応援…、よろしく、ね…!」

コメントを残す
望月杏奈
「わああっ…」
望月杏奈
そこには咄嗟に湧いてきたであろう、素直な感動を口から漏らす少女がいる。
望月杏奈
舞台袖に掴まって会場を覗きこむその瞳はいつにも増して輝いている。
望月杏奈
いかにも自分の出番が来るのを心待ちにしているといった様子だ。
望月杏奈
「まるで光の海…みたい」
望月杏奈
いつも見ている光景じゃないか、まだ慣れないのか?
望月杏奈
そう問いかける俺に彼女は背を向けたまま、首を横に振った。
望月杏奈
「そう…ですけど…」
望月杏奈
「いつも違うんです…」
望月杏奈
彼女はそう応えると、袖を掴んでいた両の手を掴んで身体をくるりとこちらに向ける。
望月杏奈
空になった両の手を磁石みたいにくっつけて、胸の辺りへと持って行く。
望月杏奈
そう、いつものように…
望月杏奈
けれど、何気ない、当たり前の光景のはずなのに…
望月杏奈
どこか煌めいていて、柄にもなく見蕩れてしまった。
望月杏奈
その仕草を見ていると、これにも毎回違う意味が込められているのか?
望月杏奈
そう勘ぐってしまうほどだった。
望月杏奈
「杏奈、実はアイドル辞めたいって思ったこともありました」
望月杏奈
泣き出しそうな顔を浮かべて、突然そう告白する少女。
望月杏奈
俺はそんな少女にどんな言葉をかけてやればいいのかわからなくなった。
望月杏奈
プロデューサーとして気の利いた言葉の一つや二つかけてやるべきなのだ…
望月杏奈
それができなくてもどかしい、自分に腹が立つ。
望月杏奈
そんな脳内葛藤を他所に彼女は続ける。
望月杏奈
「765Pの先輩方と、バックダンサーとしてだけど…一緒にやることになって…」
望月杏奈
「でも、思ってたより、ずっときつくて…」
望月杏奈
「練習しても、杏奈全然ダメだったから…」
望月杏奈
「あのね、でも、先輩と、仲間と、Pさんと、大切な人達と巡り合えたから…」
望月杏奈
「杏奈、なんとか踏ん張れたんだ…」
望月杏奈
胸の上に置いた両の手をギュッと結ぶように、涙を堪えているのがわかった。
望月杏奈
そして瞳に一粒の涙を浮かべながら微笑む彼女は誰よりも美しい。
望月杏奈
その一滴の雫の中に込められた努力や想いは、担当の俺でさえ汲み取ることが出来ない。
望月杏奈
何も言わずにその涙を拭って受け止めてやることしかできないのだ。
望月杏奈
「でも、諦めなくて、辞めなくてよかったって思います…」
望月杏奈
「だって…765Pの…先輩の皆さんと一緒のステージに立たせてもらった時…」
望月杏奈
「そこには、光の海が広がっていたから…」
望月杏奈
「でもね、毎回違うんだよ!!」
望月杏奈
「だから、いつ見ても見蕩れちゃって…」
望月杏奈
「今日はどんな景色が広がってるんだろうって!」
望月杏奈
「それが楽しみで溜まらないんです!」
望月杏奈
そう熱く語りかける彼女の瞳は煌めきを取り戻していた。
望月杏奈
「あっ、ごめんなさいっ…杏奈、もうそろそろ出番なので行ってきます」
望月杏奈
「先輩方のように最高のステージにしますから…応援お願いしますっ」
望月杏奈
ああ、行ってこい!
望月杏奈
そう鼓舞する言葉に背中を押されたのか、彼女は小さくこちらに手を振ると背を向ける…
望月杏奈
ステージに向かうその背中は初めて彼女を送り出した時とは見違えるほどに立派になっていた。
望月杏奈
それが意味するものは、彼女はもうアイドルに憧れる練習生ではないということ。
望月杏奈
いつまでも子離れできない親のような気持ちに急に襲われる。
望月杏奈
少女はいつの間にか自らの殻を破り自分自身を昇華させたのだ。
望月杏奈
レベルアップもステップアップもした杏奈の事を心の底から誇りに思う。
望月杏奈
だからこそ今日は君の成長をこの目に焼き付けさせてくれ。
望月杏奈
俺は忘れないからな…今日のこのステージを…

(台詞数: 50)