望月杏奈
はじめの頃…私たちは、ちっぽけな野原…でした。
望月杏奈
そよ風にも震え、小雨にも頭を垂れるような…小さな、小さな野原…。
望月杏奈
そんな…弱く小さな野原に…貴方は、来てくれました。
望月杏奈
風に打ち吹かれる姿も、貴方には美しいさざなみ…。
望月杏奈
雨に濡れる姿も、貴方には優しい甘露…。
望月杏奈
貴方は、私たちを、慈しみ…愛して、くれました。
望月杏奈
…それから私たちは、少しずつ命を育ませて…。
望月杏奈
草丈も延びて、草原になりました。
望月杏奈
すると、野の動物や虫たちが、私たちを…食べるように、なりました。
望月杏奈
そんな私たちを護ってくれたのも…貴方、でしたね。
望月杏奈
彼らを追い払い、駆逐するわけではなく…共に生きる道を、探してくれた。
望月杏奈
私たち、声は出せないし、笑うこともできないけど…。
望月杏奈
とても…嬉しかったん…だよ。
望月杏奈
私たちを護り続けた、貴方の顔が、少しずつ年輪を刻み始めた頃…。
望月杏奈
私たちも、ただの下草から…年輪を刻む、木へと、育っていって…。
望月杏奈
木と、木と、木。それらが集まりあって、いつしか…。
望月杏奈
私たちは、森に、なりました。
望月杏奈
風になびき、時に雨に濡れる貴方の髪を見下ろすと…いつかの私たちを、思い出します。
望月杏奈
その髪は、闇のような黒から、絹のような白へと、変わっていって。
望月杏奈
…でもそれは、私たちの年輪と違って…老いの、始まりだったんですね。
望月杏奈
貴方は、ある日、森の中で…静かに、永遠の眠りに…つきました。
望月杏奈
…それから、幾星霜が過ぎたとしても、貴方の愛を、私たちは、忘れない…。
望月杏奈
私たちを、見つけてくれて。
望月杏奈
私たちを、守ってくれて。
望月杏奈
私たちを…愛してくれて。
望月杏奈
ありがとう。
望月杏奈
───。
望月杏奈
気が遠くなるような永い時の後、私たちの中に、貴方と同じかたちの誰かが、入ってきました。
望月杏奈
…おどおどと迷いこんだ彼は、とても、心細そうでした。
望月杏奈
…大丈夫だよ。私たちは、愛を知っている。
望月杏奈
私たちが、貴方に…愛を、還してあげる。
望月杏奈
Forest。それが、大きな大きな私たちの名前。
望月杏奈
あの人がくれた…誰かのためにの気持ちの、最大で、いっぱいという意味の名前。
望月杏奈
…あの人が、私たちに、してくれたことを。
望月杏奈
私たちは、貴方に、還すから。
望月杏奈
そして私たちは、もう怖くない風と共に、仲良くなった動物たちと共に。
望月杏奈
優しい梢を、響かせた…。
(台詞数: 37)