望月杏奈
今日でリリィと出会って1ヶ月経つことになる
望月杏奈
百合子の病室に通うようになってからは3週間くらいになるのかな
望月杏奈
昨晩からずっとリリィが杏奈に話そうとしてくれたことが気になっていた
望月杏奈
杏奈は今、百合子がいるはずの病室の前にいる、でもこの3週間見てきた景色とは違った
望月杏奈
病室の番号の隣にあるはずの『七尾』という苗字の札が無くなっているから…
望月杏奈
病室の扉を開けると、そこにはいつも笑顔で杏奈のことを迎えてくれる百合子の姿はなかった
望月杏奈
杏奈は近くを通りかかった看護士さんに聞くことにした
望月杏奈
あの…ここの病室、七尾百合子さんの…病室ですよね?
望月杏奈
「はい、あなたは…最近よく来てくれている七尾さんのクラスメイトの子?」
望月杏奈
…杏奈がコクりとうなずくと、看護士さんは気まずそうに口を開いた
望月杏奈
「七尾さんね…昨晩、容体が急変して…昨晩中にお亡くなりに…」
望月杏奈
…杏奈は一言、そうですか…と呟いてからその場を足早に去った
望月杏奈
杏奈…動揺してる?…胸がなんか苦しい
望月杏奈
胸がまるで締め付けられてるみたいに…苦しい
望月杏奈
杏奈にはなんで胸が苦しいのかわからない
望月杏奈
辛いのかな?
望月杏奈
でもなんで辛いの?杏奈にはわからない…だって百合子はただのクラスメイトで…
望月杏奈
でもどうして…心に穴が空いたような気持ちになるの?
望月杏奈
わからない…握手を交わしたあの日、あの瞬間から杏奈の世界には色がついて…
望月杏奈
でもなんで?
望月杏奈
百合子はいつも杏奈の話を楽しそうに聞いてくれた
望月杏奈
百合子はいつも杏奈に優しく微笑みかけてくれた、笑顔をくれた
望月杏奈
百合子はいつも杏奈が放課後に百合子のところを訪ねるのを目を輝かせながら心待ちしてくれた
望月杏奈
それで杏奈も…いつの間にか百合子のところを訪ねるのを楽しみにして…いた?
望月杏奈
百合子は杏奈にとって…友達…なの?
望月杏奈
百合子の突然の訃報を受け、杏奈はその日、ゲームをする気にはなれなかった
望月杏奈
「明日、事情を説明して、謝ればいいよね…」
望月杏奈
~翌日~
望月杏奈
杏奈が今抱いている気持ちがなんなのかリリィに教えてもらおうと思った
望月杏奈
でもその前に杏奈はリリィが話そうとしてくれたことを聞かないといけない
望月杏奈
杏奈にはその義務がある
望月杏奈
杏奈はいつもの場所で、いつもの時間に待つことにした
望月杏奈
リリィはこなかった…こなくても仕方ないとも思った
望月杏奈
だって杏奈のことを信頼して大事な話をしようとしてくれたリリィを…杏奈は裏切ったから…
望月杏奈
杏奈はリリィの気持ちを踏みにじったんだ…
望月杏奈
謝りたかった、そして聞きたかった
望月杏奈
リリィが杏奈に話そうとしてくれたこと
望月杏奈
杏奈はその日からずっと待ち続けた
望月杏奈
リリィがやって来るのをずっと…
望月杏奈
ずっと一人で待ち続けた
望月杏奈
ずっと独りで…
望月杏奈
杏奈はこの世界でひとりぼっちだ
望月杏奈
リリィと百合子の二人を失った杏奈の…
望月杏奈
暗くて
望月杏奈
寂しくて
望月杏奈
長い…
望月杏奈
長い冬がはじまった
(台詞数: 47)