七尾百合子
ネトゲで出会ったフレンドが私のクラスメイトなんで思いもしなかった
七尾百合子
これは神様の気まぐれか、はたまた予め神様に定められた運命か私に知る術なんてないけれど…
七尾百合子
檻に閉じ込められながらも世界に憧れを抱く私と、対照的に世界を拒み自ら進んで殻に籠る彼女
七尾百合子
私達の出会いには何か「理由」があるのかもしれない、私がそう思いたいだけだけど
七尾百合子
私達がネトゲで出会ってからそろそろ1ヶ月経つ、私から見て彼女は良い方向で変わりつつある
七尾百合子
私はそれが自分の事のように嬉しかった、毎日病室を訪ねては彼女が見た世界の色を話してくれて
七尾百合子
彼女の抱いている世界への恐れとか、その全てが伝わってきて
七尾百合子
彼女を介して直接世界を私が体感できる気がした、それと同時にこんな私が嫌になった
七尾百合子
私だけが、杏奈ちゃんとうさちゃんが同一人物であることを知っていて、知らない振りをしている
七尾百合子
杏奈ちゃんからは、私とリリィが全くの別人だと思っている、実際接していてそう感じる
七尾百合子
杏奈ちゃんからしたら「リリィ」という人物が彼女に勇気や元気を与え
七尾百合子
病弱で可哀想な「百合子」というクラスメイトの話し相手になって元気を与えているだけなのだから
七尾百合子
私は卑怯だから…この事を打ち明けるのが怖かった、話したら杏奈ちゃんはもう会いに来てくれない
七尾百合子
うさちゃんは私ともう遊んでくれないと思うから
七尾百合子
彼女と接している二つの時間の時に同じ葛藤がずっと繰り返される
七尾百合子
私はどうしたかったんだろう?
七尾百合子
窓から見える人のように、重ねて世界を見たかったの?
七尾百合子
寂寥と虚無感を杏奈ちゃんを利用して埋めようとしたの?
七尾百合子
違う…そんなんじゃ…
望月杏奈
ごめん、リリィ、今日はそろそろ落ちるね
七尾百合子
うん、うさちゃんお疲れ様!…
七尾百合子
あの!!、うさちゃん!
望月杏奈
リリィ、なに?
七尾百合子
あの、私、うさちゃんに、言わなくちゃいけないことがあるの!…私の大事なフレンドだから!
七尾百合子
…ダメ…怖くて言えない…手の震えが止まらない
七尾百合子
だから…
七尾百合子
…時間がないのに…
望月杏奈
急にどうしたの?大丈夫?
七尾百合子
だ、大丈夫、なんかごめんね、時間かかりそうだから、明日ちゃんと話すね!
望月杏奈
わかった、大事なこと…なんだよね?、リリィの話、明日ゆっくり聞くね
望月杏奈
また同じ時間にいつもの場所に来るね、それじゃまたね
七尾百合子
…私がまたねという前に彼女はオフラインになってしまった
七尾百合子
私の中に根付く寂寥と虚無が別の感情で埋められる
七尾百合子
「そっか…私は…本物の、友達になりたかったんだ」
七尾百合子
私の指の代わりに私の頬を伝って落ちる涙がキーボードを叩き続ける
七尾百合子
落ち着きを取り戻すと私は紙を取り出して、ただただ私の気持ちをその紙に綴った
七尾百合子
この出会いになにか理由があるとするならば…きっとこれだよね
七尾百合子
~神様は無慈悲にも彼女の灯を吹き消したのだけれども~
(台詞数: 38)