望月杏奈
案内された病室の前につくと、扉からは勢いよく幼い男の子が出てきて何処かに行ってしまった
望月杏奈
病室に入るか入らないかの葛藤を脳内で繰り広げていたら、看護師さんが気を利かしてくれて…
望月杏奈
百合子ちゃんにお客さんだよ!といって病室の扉を開けてから杏奈の背中を押してくれた
望月杏奈
窓の外を見ていた七尾さんは杏奈の方に視線を移すと
七尾百合子
なんだか珍しいお客さんが来たみたいね、こんにちは
望月杏奈
…そう、笑顔で迎えてくれた
望月杏奈
あの…これ課題
望月杏奈
…杏奈は矢吹さんに頼まれた課題をもじもじしながら七尾さんに渡した
七尾百合子
望月さん、ありがとう!いつもは可奈が届けてくれるんだけど、最近部活で忙しいみたいで…
望月杏奈
うん、矢吹さんも同じ事言ってたよ、その…七尾さんの身体の具合はどうなの?
七尾百合子
最近はよくなってきてるとおもうよ!
望月杏奈
そっか…
望月杏奈
…杏奈は会話を続けることができずにしばらく沈黙が続いた
望月杏奈
七尾さんが課題のプリントをペラペラ捲ってる音が聞こえる
七尾百合子
ねぇ、望月さん
望月杏奈
なに?
七尾百合子
望月さんは学校楽しい?
望月杏奈
別に…普通かな、自分の部屋にいるほうが好きだけど、学校に行かなくてもいいなら、行かないかな
七尾百合子
そっか、私はね、望月さんが少し羨ましいな
七尾百合子
だって私はこうして病室という限られた狭い世界にしか居られないから…
七尾百合子
毎日退屈な時間には窓から見える外の世界を見て思うんだ
七尾百合子
私も欠伸をしてる人になりたいとか、何気ない会話に花を咲かせてる女の子達になりたいって…
七尾百合子
ここにいないあそこにいる人達の世界はどこまでも広がっていて、色んな体験が出来て
七尾百合子
自ら選択肢を選べて、羨ましいって思うな、って何言ってるんだろう私、ごめんね、望月さん
望月杏奈
…七尾さんはこんな杏奈のこと羨ましいって思うんだ
望月杏奈
いいよ…別に
七尾百合子
あのね、望月さんさえよければ明日から帰りに私の所に寄ってきて話し相手になってくれませんか?
七尾百合子
私もここから見える子達のように、話がしたいの、本当に少しでいいから!
望月杏奈
うん、いいよ
望月杏奈
…杏奈は気付いたら二つ返事で快諾していた、間違えた、言い直さなくちゃと思ったけど
七尾百合子
やった!私嬉しいな!可奈は忙しくてきてもすぐ帰っちゃうし、私の毎日の楽しみが増えるよ!
望月杏奈
…目を輝かせながら無邪気に喜んでいる七尾さんを相手に杏奈は今更発言を訂正できる訳もなく
望月杏奈
それに杏奈なんかとの会話を楽しみにしてくれる人なんていままでいなかったから
望月杏奈
いや、リリィがいる、でもリリィはリアルじゃないから、でもやっぱ七尾さんは二人目…
望月杏奈
「まぁ…杏奈、帰宅部だし、いいかな」
七尾百合子
ねぇねぇ、望月さん、握手しよ!
望月杏奈
…七尾さんはそういって私に手を差し出し、クイクイッと握手を求めてきた
望月杏奈
杏奈、でいいから…
七尾百合子
わかった!私も下の名前で呼んで欲しいな!杏奈ちゃん!
望月杏奈
百合子…よろしく
七尾百合子
うんっ!
望月杏奈
…杏奈にとってはただのクラスメイトであった女の子に優しく差し伸べられた手を取るように
望月杏奈
杏奈も手を伸ばした
望月杏奈
二つの手が繋がった瞬間、スイッチが入ったように
望月杏奈
杏奈の世界には色がついた
(台詞数: 45)