望月杏奈
ん……ここは……?
望月杏奈
………そうか、夢の中。…だって……瑞希さんが…居る
真壁瑞希
お久し振り……いえ、毎晩会っていましたね。……今日は大人しい方の望月さんかな
望月杏奈
私は……いつになったら、ここから出られるのかな
真壁瑞希
望月さんは私と会えないことを望んでいるのですね。……ふむ
望月杏奈
だって……忘れられてないってこと。………いい加減、立ち直るべきだから
真壁瑞希
しかしそれは一般論です。望月さんが私を求めている、そして私がここにいる……
真壁瑞希
……それの何がいけないのでしょう。もやもや
望月杏奈
だって、瑞希さん……この後、消えちゃうんでしょ?
真壁瑞希
そうですね。これは消える前の私ですから……消えなければ、私ですらない
望月杏奈
……やっぱり。あの時から、私は一歩も……進めてない
真壁瑞希
……それでもいいのでは。望月さんが時を進めない限り、私はここに居ます。
真壁瑞希
自分の大切だった時間の中で生きていく。……何度でも繰り返していく
真壁瑞希
狂うことで自分の一番の思い出の中で暮らせるなら……それはとても幸せではないですか
望月杏奈
……私は…もう狂ってるの………?
真壁瑞希
難しい質問です。……狂人は普通の人に世界がどう見えてるのか分からないので、比べようが無い
真壁瑞希
だから自分が狂っていると断言できる狂人など居ないのです。
真壁瑞希
もっとも、普通のパラダイムを持てない時点で……狂っていることは明白なのですが
望月杏奈
……じゃあ瑞希さんが教えてよ。………今の私が…どうなのか
真壁瑞希
それは出来ません。……分かってるのでしょう?私は、あなたが作り出した幻。あなたの一部です
真壁瑞希
だから狂人である事を断言できず……あなたが夢から覚めれば、また消える
望月杏奈
…私は………瑞希さんを失いたくないし…立ち止まるのも嫌
望月杏奈
……一緒に行く方法はないのかな
真壁瑞希
2つの存在が1つになる事はあってはなりません。……故に酷い痛みを伴う
真壁瑞希
……ちょうど、カニバリズムによってもたらされるクールー病のように
望月杏奈
………………
真壁瑞希
それに先程も言いましたが、私は真壁瑞希ではありません。私はあなたの妄想……あるいは願いです
真壁瑞希
真壁瑞希と共に歩みたいという願いだけ抱えていったところで……もう居ないのですよ
望月杏奈
……さっきまで私をそそのかそうとしてたのに…今度は引き止めてくれるんだ
真壁瑞希
私はあなたの願い。口数の足らないあなたを代弁するだけの存在です。
真壁瑞希
……まもなく真壁瑞希は消えます。あなたの狂気は終わった。これからを毎日積み重ねればいい
望月杏奈
……音が……目覚まし時計が鳴ってる
真壁瑞希
それだけではありません。耳を澄ませてください
真壁瑞希
車が走る音、ハムエッグの焼ける音、時折交じる小鳥のさえずり。……全て、1日が始まる音です。
真壁瑞希
お行きなさい。……あなたの頭は、あなたの足と共にしか進めないのですから
望月杏奈
……うん、ばいばい。二度と会わないよ
真壁瑞希
はい。ばいばいです
(台詞数: 37)