ファフロツキーズより愛を込めて
BGM
赤い世界が消える頃
脚本家
親衛隊
投稿日時
2016-10-26 23:03:40

脚本家コメント
長いです。暗いです。
個人的嗜好全開のドラマです。

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高山紗代子
先日、某所にてファフロツキーズなる事象を観測した。
高山紗代子
スコールと共に空から降ってきたのは、なんと1隻の船。
高山紗代子
幸いにも船が落下した場所は広大な畑であり、加えて深夜であった為、人的被害はなかった。
高山紗代子
と、思われる──。
高山紗代子
報告書だと、どうにもこの辺りが言葉を濁していて要領を得ない。
高山紗代子
まあ、百聞は一見に如かず。という事で、私は部下を連れて現地へと赴いた。
高山紗代子
巨大な船。見た目はボロボロで型式も古い。もしかして中世の物だろうか。
高山紗代子
これと海上で出くわした日には、フライング・ダッチマンの存在を確信するだろう。
高山紗代子
私は掛けられていた梯子を登り、デッキから船内へ足を踏み入れた。
高山紗代子
「人的被害はない、か。嘘つき……」
高山紗代子
独特の饐えた様な甘い臭い。同じ臭いを発する物を私は1つしか知らない。
高山紗代子
まったく最悪の気分だ。今日はランチが喉を通らないだろう
高山紗代子
内心で悪態を吐きながら、暗い通路を懐中電灯の光を頼りに進んで行く。
高山紗代子
船内にはブヨブヨになった緑色の"何か"が散乱していた。
高山紗代子
言うまでもなく悪臭の発生源だろう。彼方此方にパーツが転がっている。
高山紗代子
奇妙な物体は、他にも見受けられた。
高山紗代子
「壁に埋もれたマネキン、床に焦げ付いた服、それに不自然な水溜り……」
高山紗代子
「そういえば、昔の調査書で似たような話を読んだ気がする」
高山紗代子
「あれは船体消磁の実験失敗によるもの、で打ち切られたんだっけ」
高山紗代子
辺りを見廻しながら歩いていると、やがて突き当たりの部屋に行き当たった。
高山紗代子
「船長室」
高山紗代子
「航海日誌、置いてないかな」
高山紗代子
念の為、胸ポケットに忍ばせていた銃を構えながら慎重にドアノブを回す。
高山紗代子
「……」
高山紗代子
ここは死者の船だ。
高山紗代子
ファフロツキーズは、簡単に言えば天からのギフト。
高山紗代子
空からカエルや魚が降って、それはもうお伽噺の様に愉快痛快な現象とされている。
高山紗代子
もしも雲の中で魚が泳げたなら私達の知る空と海は、逆の認知なのかもしれない。
高山紗代子
「……ありえない」
高山紗代子
先の船体消磁実験、名前はフィラデルフィア計画だったか。
高山紗代子
この時は強力な磁場を発生させ、敵のレーダーから姿を消す為の実験だったらしい。
高山紗代子
結果は失敗。実験中、船は謎の光に包まれて何千キロも離れたビーチに瞬間移動したそうだ。
高山紗代子
後に、実験に携わった船員の大半が変死しているのが発見された。
高山紗代子
また、生き残った人間も精神に異常をきたしたりと散々だったらしい。
高山紗代子
私が船内で散見した謎の物体。あれは件の調査書で見た死体の状況と非常に酷似している。
高山紗代子
仮に、今回のファフロツキーズが船体消磁による瞬間移動によるものだったら。
高山紗代子
過去から未来へ物体が転送されたとしたなら。
高山紗代子
「……ありえない」
高山紗代子
そう期待に胸を膨らませていたが、この部屋のある存在によって消え失せた。
ロコ
「すぅ……すぅ……」
高山紗代子
「生き……てる、よね?」
高山紗代子
ここは死者の船だ。
高山紗代子
だが、目の当たりにしている現実は真逆。
高山紗代子
少女の眠りは安らかで、まるでお伽噺の世界に出てくる姫様のよう。
高山紗代子
……眩暈がしてきた。頭の処理が追い付いていない。
高山紗代子
「……ともかく、この子から話を」
高山紗代子
警戒しつつ、起こそうとした──その時。
ロコ
「ふぁ……」
ロコ
「グッドモーニング、です……?」
高山紗代子
少女は私に向かって、呑気にあくびをして見せたのだった。

(台詞数: 50)