
七尾百合子
ジリリリリリリリ

七尾百合子
「……ん…」

七尾百合子
─鳴り響く電子音に導かれ、浮上する意識/世界。

七尾百合子
脳に突き刺さるような無機質なアラームには、気が滅入ってしまいます

七尾百合子
とは言え、融通の効かない携帯電話のことです

七尾百合子
きっと力尽きるまで、自分の仕事を全うするんでしょう

七尾百合子
でも。それはとても可哀想なこと。

七尾百合子
だから、私の朝一番の仕事はこの子を止めてあげることです

七尾百合子
止めた途端、消えた音に感じ入るものが無いわけではありませんが…

七尾百合子
「んッ………はぁ………」

七尾百合子
起き上がるという朝二番の仕事と同時に伸びをします

七尾百合子
悩ましげとは程遠く、色気の欠片もない吐息が漏れちゃいました

七尾百合子
─すると、再び異常を訴えてくる脳髄。

七尾百合子
…ああ。そう言えば、私は夢を見ていたのでした──

七尾百合子
──

七尾百合子
──そこは広大な砂漠。果てのないガイア。

七尾百合子
掬い上げても、指の隙間から零れ落ちる小さな星の粒子。

七尾百合子
その中央に、ただ独り佇む私。

七尾百合子
天を見上げても、太陽も窓もない穹に風は一陣も吹きません

七尾百合子
さすれば、時間感覚が崩れてしまうのは当然のこと

七尾百合子
故に、それはとても永い夢に感じました

七尾百合子
心を苛む孤独がそれを助長して、いつしか砂に呑まれてしまうのではないか?

七尾百合子
そう思う程、思考回路は荒唐無稽を極めていました。

七尾百合子
冷めていく躯と、醒めない夢

七尾百合子
私は揺れ動く曖昧と踊り、───ふと情景が断線します

七尾百合子
忽焉現に戻るも、精神旅行の辿り着いた先は不鮮明

七尾百合子
所詮夢など、そんなものなのでしょうか?

七尾百合子
いや、まだ思考が正常でないことが分かっただけ良しとしましょう

七尾百合子
起き上がって冷水で顔を洗えばいいんです

七尾百合子
そうすれば、私はいつもの「七尾百合子《リリィ・ナイト》」に戻れる筈。

七尾百合子
ゆるゆると立ち上がり、洗面所に向かう頃には頭の靄は外れていました

七尾百合子
「ふぁぁ…昨日、徹夜しちゃったからなぁ……」

七尾百合子
窓から差し込む西日。

七尾百合子
──午後4時。今日も遅めの一日が始まります
(台詞数: 34)