七尾百合子
「絶対!絶対お母さんは入ってきたらダメだからね!?」
七尾百合子
『はいはい、分かってるわよ』
七尾百合子
今夜、プロデューサーさんを我が家に招待することになっている
七尾百合子
私のお勧めの本を紹介するという名目だが、勿論そんなものは口実に過ぎない
七尾百合子
こ、今夜はプロデューサーさんと部屋に二人っきり。…あわわわ
七尾百合子
『まぁた自分の世界に入っちゃってるわねこの娘は』
七尾百合子
静かな部屋に大人の男性と二人きり。本を読むことに集中してる私の無防備な姿を見た彼は…
七尾百合子
\ピンポーン/
七尾百合子
「ひゃわぁぁぁぁぁ!?」
七尾百合子
『ほら、貴女の愛しの彼が来たみたいよ?』
七尾百合子
「お、お母さん!」
七尾百合子
…どうしよう、私の格好変じゃないかな?髪は可笑しくないかな?
七尾百合子
『大丈夫よ百合子』
七尾百合子
「お母さん…!」
七尾百合子
『お赤飯はいつでも炊けるようにしておくから♪』
七尾百合子
「絶対に部屋に入ってこないでね!?絶対だよ!?」
七尾百合子
『分かってる分かってる♪』
七尾百合子
どうしよう、全然信用できない…
七尾百合子
「と、とにかく玄関のドアを開けなくちゃ!」
七尾百合子
うぅ、心臓がバクバクいってる。多分顔も赤い…
七尾百合子
うぅん、ダメ!こういうときこそ女は度胸よ百合子!
七尾百合子
「すぅ~、はぁ~」
七尾百合子
深呼吸をして、息を整えて…よし!
七尾百合子
「ぷ、プロデューサーさん!いらっしゃ…」
七尾百合子
『あらあら、どうもいらっしゃいませプロデューサーさん♪』
七尾百合子
「お母さぁぁぁぁん!!!」
七尾百合子
私の振り絞った勇気は全て無駄となりました
七尾百合子
『さぁさぁ、外は暑かったでしょう?中へどうぞ』
七尾百合子
あぁ、私が部屋まで案内する予定が…
七尾百合子
うぅ…やっぱり私ってこんなときにも勇気を出せないダメダメなんだ…
七尾百合子
『百合子、今日はよろしくな?』
七尾百合子
「は、はい!早く私の部屋にいきましょう!」
七尾百合子
「えへ、えへへぇ…///」
七尾百合子
『うーん、この娘の将来大丈夫かしら?やっぱりプロデューサーさんに貰ってもらわないと…』
七尾百合子
後ろで何かを呟いている声は、私の耳には全く届きませんでした
七尾百合子
『あ、お母さん、これはつまらないものですが』
七尾百合子
『あらあら、そんな気を使っていただかなくても良かったのに』
七尾百合子
『いえ、こんな夜分にお邪魔させてもらうので…』
七尾百合子
二人が大人の会話を交わしている。それに交ざれない私はちょっとだけ嫉妬しちゃって…
七尾百合子
「ぷ、プロデューサーさん、早く行きましょう?」
七尾百合子
待ちきれない子どものようにプロデューサーさんを急かしてしまった
七尾百合子
『そうだな、じゃあ行くか』
七尾百合子
子どもだと思われてないだろうか?がっかりさせてしまってないだろうか?
七尾百合子
そんな良くない考えが頭の中をぐるぐると巡り、中々消えてくれません
七尾百合子
…でも
七尾百合子
『ほら、百合子』
七尾百合子
「あ…」
七尾百合子
プロデューサーさんの暖かい手が、私の手を包んでくれた瞬間、私の不安は吹き飛んでしまいました
七尾百合子
『あ、私は孫は二人ぐらいが欲しいわねぇ』
七尾百合子
「お母さぁぁぁぁん!!!」
(台詞数: 50)