小さな本に大きな世界を
BGM
透明なプロローグ
脚本家
stardustP_アステル
投稿日時
2017-05-14 15:43:01

脚本家コメント
百合子が劇場内の書斎に足を運ぶ、そんなおはなし。
某所で『台詞の無いドラマが見てみたい』という天啓が降りてきたので挑戦してみましたが、なんか台詞っぽくなってしまった気がします……。
気が付いたらドラマシアターを始めて1年経っていました。
これも皆様の応援あっての功績です。
ありがとうございますm(_ _)m
そして今後ともよろしくお願いします。
コメ返しや他者作品の閲覧が遅れがちですみません。
必ず致しますので今暫しお待ちを……。

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七尾百合子
プロデューサーさんが執筆活動を始めてちょうど一年経ったある日。
七尾百合子
私はプロデューサーさんがよく出入りする劇場内の一室、書斎を訪ねてみた。
七尾百合子
……………。
七尾百合子
ノックをしても返事がないので、ドアノブを捻り軽く挨拶をしつつ扉を開ける。
七尾百合子
……そこにプロデューサーさんの姿は無かった。どうやら席を外しているらしい。
七尾百合子
鍵もかけないなんて無用心だなぁ、と思いつつ私はその部屋に足を踏み入れた。
七尾百合子
……………。
七尾百合子
私の目に映ったのは、執筆活動において最低限必要なものが置いてあるだけの簡素な室内だった。
七尾百合子
机に椅子、筆や原稿用紙など創作活動に関わる道具、仮眠用と思われる簡易ベッド……、
七尾百合子
……そして、天井付近まで届く巨大な本棚。しかし収められている冊数は半数にも満たない。
七尾百合子
私は本棚の真下にある階段式の踏み台を使い、その中からランダムで5冊取り出してみた。
七尾百合子
そして冊子を机の上に置き、順番に中を開けて読んでみる。
七尾百合子
……………。
七尾百合子
……これは一番上の一番左にあった作品。プロデューサーさんのデビュー作だったかな?
七尾百合子
春香さん、未来、麗花さんがラジオ形式でドラマの創作活動について解説する内容だった。
七尾百合子
あの時のプロデューサーさんは切羽詰まった表情をしていた。余程反響が怖かったんだろうなぁ…。
七尾百合子
結果的には他の読者さんから沢山の歓迎の声が来ていたので翌日は安堵の表情に変わってたけどね。
七尾百合子
次は……これは亜利沙さんの誕生日記念?
七尾百合子
これについては全く反響が無かったらしく、プロデューサーさんも見るも無惨な表情だった。
七尾百合子
そういえばあの人、誕生日記念作品を書いてるのをほとんど見た事がなかったけど、もしかして…?
七尾百合子
気を取り直して、次の作品を開けてみる。
七尾百合子
これは……千早さんがお姉ちゃんとして育ちゃんに接する一コマだった。
七尾百合子
決して噂されてるアレな方じゃなくて、しっかりお姉さんしてる心温まる作品。
七尾百合子
……いいなぁ……私もこんな風に年上の人に甘えられたらなぁ……。
七尾百合子
……はっ、いけない。気を取り直して……次の作品は……。
七尾百合子
美奈子さんに可奈ちゃん、このみさん、プロデューサーさんがブクブク太らされる。
七尾百合子
美奈子さんに可奈ちゃん、このみさん、プロデューサーさんがブクブク太らされる。という夢オチ。
七尾百合子
美奈子さんは基本気遣いが出来る人だし、ここまで暴走することはない、はずだよね……?
七尾百合子
……改めて気を取り直して、最後の一冊を開いてみる。
七尾百合子
これは……春香さんの誕生日記念作品だね。プロデューサーさんにとってはリベンジだったのかな?
七尾百合子
あの人曰く、“あえて主役を出さないのも一興”だとか。
七尾百合子
結果的には沢山の反響をもらえたらしく、プロデューサーさんの表情は驚きでいっぱいだった。
七尾百合子
……そうだよね。全く反響をもらえなかったあの時の誕生日記念とは段違いの評価だったもんね。
七尾百合子
……取り出した作品を全て読み終えた私は、それぞれを順番通りの場所にもどした。
七尾百合子
……そして何気なく辺りを見回してみると、本棚の横にある小さな金庫に気付いた。
七尾百合子
『お蔵入リスト』。金庫の扉にはペンでそう書かれた紙が無造作に貼り付けられていた。
七尾百合子
プロデューサーさん曰く、途中まで書いたけど理由あって公開をやめた、という作品群らしい。
七尾百合子
開錠のための番号はプロデューサーさんしか知らないので、残念ながら開けることは出来ない。
七尾百合子
……この中に何枚の原稿が入っているのか分からない。そして日の目を見る時は来るのだろうか。
七尾百合子
そして金庫から目を離し、改めて書斎の中を見回してみる。
七尾百合子
……本当に必要な物しか置いてない簡素な部屋だなぁ……。
七尾百合子
でもプロデューサーさんは、この部屋の中で1年間物語を紡いできた。その事実は変わらない。
七尾百合子
次に例の大きな本棚に改めて目を向ける。
七尾百合子
いつかこの本棚がいっぱいになったら、プロデューサーさんは執筆をやめてしまうのだろうか。
七尾百合子
それとも、一冊分空けてから新たに書き始めるのだろうか。私には分からない。
七尾百合子
これはプロデューサーさんが決めることであって、私が関わることじゃないのは分かってる。
七尾百合子
でも私としては、プロデューサーさんには今後も執筆活動を続けて欲しい。
七尾百合子
ここから紡ぎ出される様々な世界を、より多くの人に見せていってほしい。
七尾百合子
そんな細やかな願いを胸に込めつつ、私はこの書斎を後にした。

(台詞数: 49)