七尾百合子
あれからどのくらいの時が経ったのだろうか…
七尾百合子
吸血鬼になってからは毎日が退屈で仕方なかった。
七尾百合子
でも、何にも興味は湧かなかった。
七尾百合子
何にもやる気が起きなかったからだ。
七尾百合子
この身体になってからはいいことなんて何もない。
七尾百合子
夢も…希望も…何もない。
七尾百合子
どんなに待ってても、奇跡なんて起こりはしない。
七尾百合子
考えるだけ無駄だ。私はそう思っていた。
七尾百合子
だけど…どうしてだか外の世界が気になってきた。
七尾百合子
あれからどのくらいの時が経ち、外の世界はどうなっているんだろう…と。
七尾百合子
(ぐぅぅ)
七尾百合子
余計なことを考えたせいか、お腹がすいていたことを思いだした。
七尾百合子
いくら失われない命を手に入れたといっても当然お腹はすいたりする。
七尾百合子
それに痛みだって…
七尾百合子
昔、太陽の光を浴びたときに猛烈な痛みを感じた時は苦しかった…
七尾百合子
それでも私の命は失われることはなかったのだが…
七尾百合子
(ぐぎゅるるるる)
七尾百合子
お腹の音が更に激しくなった。
七尾百合子
久しぶりに余計なことを考えたせいだろうか。
七尾百合子
別に食べなくても平気なのだがお腹が食べ物を求めている。
七尾百合子
ちなみに私が吸血鬼だからといって血を吸うわけでもない。
七尾百合子
そもそもあれからまともに人と会ってもいないのだ。血どころではないし何か嫌だ。
七尾百合子
それにここは人里離れた森の中。滅多に人なんか来やしない。
七尾百合子
来るとしても吸血鬼がいると噂を聞いた物好きが来る程度だ。
七尾百合子
だが、そんな人たちも私が一睨みするだけで逃げていく。
七尾百合子
私が人だった頃からそうだった。吸血鬼に見つかると血を吸われて干からびてしまうと言われていた
七尾百合子
だけど実際そんなことはない。なぜなら私がそうだからだ。
七尾百合子
(ぐぎゅるるるる)
七尾百合子
あぁ、そういえばお腹空いてたんだっけ?すっかり忘れてた。
七尾百合子
私は重い腰をゆっくりと上げ、食材を確保しに行こうとしたその時だった。
七尾百合子
(ピンポーン)
七尾百合子
一体誰だろう?勝手に入ろうとした人は何人かいたが律儀にインターホンを鳴らす人は初めてだ。
七尾百合子
まぁ勝手に入ろうとしても鍵をかけてあるから入れはしないのだが…。
七尾百合子
(ピンポーン)
七尾百合子
このまま黙っててもいいのだがお腹が空いてるとイライラもしてくる。
七尾百合子
どうせこの人も一睨みすれば逃げていくだろう…
七尾百合子
そう思った私はドアを開け、一睨みをしようとした……その時だった。
七尾百合子
『見つけた…』
七尾百合子
私は身の毛がよだった。この人は他の人とは違う…一体誰なんだ…
七尾百合子
この時の私はまだ知らなかった。
七尾百合子
この人と出会うことによって、私の人生が大きく変わっていくということを…
(台詞数: 41)