七尾百合子
私には夢がありました。
七尾百合子
それは、私の書いた物語を世界中に広めるという夢。
七尾百合子
私はその夢を叶えるためにひたすら努力をしました。
七尾百合子
私の想い描くストーリーをどんどんこの紙に書き留めていきました。
七尾百合子
この紙は私にとって命よりも大事なものでした。
七尾百合子
私の想い…私の夢がつまった大事な大事な紙です。
七尾百合子
そんな想いが詰まっている紙を一冊の本にして、私は本屋さんという所に持っていきました。
七尾百合子
ここなら色んな人に見てもらえる。そう思ったのです。
七尾百合子
けど、そう簡単にいくことはありません。結果は惨敗。私の書いたお話がつまらないとのこと。
七尾百合子
だけど、私は諦めませんでした。
七尾百合子
今のお話がつまらないなら、次はもっと面白いものを書けるようになればよかったから。
七尾百合子
そして、私は家を飛び出して色んな場所に行きました。
七尾百合子
海を越え、山を越え、洞窟を抜け…時には事件に巻き込まれたりもしました。
七尾百合子
だけど、それらは私にとっては物語を書くための資料として大切に記憶していったのです。
七尾百合子
ようやく家に帰ってきた私は早速物語を書く作業に入りました。
七尾百合子
色んな場所での経験、体験が私の中の物語に詰め込まれていく…
七尾百合子
これならきっと、大丈夫。
七尾百合子
そう信じた私は、大切に書き留めた一冊の本をもって再びあの場所へと訪れました。
七尾百合子
だけど、結果はまたも惨敗でした。
七尾百合子
どうやら今度は色々詰め込みすぎて何が何だかわからなかったみたいです。
七尾百合子
それでも私は諦めませんでした。
七尾百合子
「そうだ、一冊の本で終わらせようとするからダメなんだ…それなら…」
七尾百合子
そう考え、私はどんどんと物語を書いていきました。
七尾百合子
余計だと思う部分は削り、必要だと思う部分を書き留め、私が想い描く最高の物語を作るために。
七尾百合子
だけど…
七尾百合子
ある日、ふと思ってしまったのです。
七尾百合子
私は、何のために物語を書いているだろう…と。
七尾百合子
お金のため?……違う。
七尾百合子
誰かに認めてもらうため?……違う。
七尾百合子
一体何のためなのか…私には思い出すことができませんでした。
七尾百合子
やがて、私には物語を書くという作業が辛くなってきたのです。
七尾百合子
こんなに苦痛になる作業をどうして今までやっていたんだろう…
七尾百合子
わからない……どうして?なぜこんなことをしているんだろう?
七尾百合子
それに私は何のために生きて、何のために存在しているのか…
七尾百合子
そう思っている内に私は色んなものを失いました。
七尾百合子
明日着ていく服、今日食べるもの、生活していくためのお金、そして……
七尾百合子
明日へと…生きる希望すら……
七尾百合子
全てを失った私は…最後にふと、あることを思い出したのです。
七尾百合子
それは、決して触れてはならない禁忌のことを…
七尾百合子
どうせ失うものは何もないんだ。そう思った私は…触れてしまったのです。その禁忌に…
七尾百合子
何かを得るためには、何かを犠牲にしなくてはならないとはよく言ったものだ。
七尾百合子
もう失うものはないと思っていた私は…失ってしまったのです。それは…
七尾百合子
人としての姿を…そして、得てしまったのです。
七尾百合子
失われることのない…命を…
七尾百合子
そう…私は……永遠の命を持った吸血鬼になってしまったのです。
七尾百合子
「私に残されたなんてもう何もないのに…」
七尾百合子
そう思っていたらバサッと何かが落ちた音が聞こえたのです。
七尾百合子
全てを失ったと思った。だけど…まだ残っていた。私に残されたもの、それは……
七尾百合子
今まで私が書き留めていた本だったのです。
七尾百合子
でも…これでどうやって生きていけばいいの?……そう考えている内に時は流れていったのです。
(台詞数: 50)