天空橋朋花
迎え……ですか?
高山紗代子
はい。
天空橋朋花
あの、いまいち状況が飲み込めないのですが……。
高山紗代子
あ、ごめんなさい。流石に話が急過ぎましたね。
高山紗代子
えっと、どこから話そうかな……。
高山紗代子
まず、初めてお会いした時から店主さんのことが好きでした。
天空橋朋花
これはこれは……ありがとうございます。
高山紗代子
ふふ、最初は綺麗な人だなーなんて思いながら眺めていました。
高山紗代子
でも話している内に、店主さんが普通の人より希薄なように思えてきて……。
天空橋朋花
希薄……。
高山紗代子
言葉にし難いのですが、目の前に居るのに薄らいでいるような。
高山紗代子
他人と接しているときの微細な緊張感や圧迫感が欠如しているような、不思議な感覚です。
天空橋朋花
……なるほど。
高山紗代子
あの、店主さん。
天空橋朋花
はい?
高山紗代子
よろしければ、握手してもらえませんか?
天空橋朋花
……何故でしょう?
高山紗代子
それで先程の謎が解けるからです。
天空橋朋花
……。
天空橋朋花
……申し訳ありませんが──
高山紗代子
店主さん。
高山紗代子
この子、覚えてますか?
七尾百合子
……。
天空橋朋花
ええ、もちろん。
天空橋朋花
お客様がこちらでご購入されたビスクドールですね。
高山紗代子
正解です。この子の名前、『百合子ちゃん』っていうんですね。
天空橋朋花
どこから、それを?
高山紗代子
百合子ちゃんが教えてくれました。アンティークショップのこと、母親のこと、店主さんのことも。
天空橋朋花
人形と会話をしたとでも……?
高山紗代子
会話まではしていません。声を聞いただけです。
天空橋朋花
声……ですか。
高山紗代子
まあ、それが私に向けてなのかどうかまでは判りませんが。
天空橋朋花
その子は、何と?
高山紗代子
……。
高山紗代子
愛されたい人がいます。
高山紗代子
愛されたい物もいます。
高山紗代子
違うのは言葉だけ。
高山紗代子
どちらも認めてあげて。
高山紗代子
どちらも愛してあげて。
高山紗代子
暗がりで待つ女の子に。
高山紗代子
もう頑張らなくていいよって、
高山紗代子
伝えてあげて、と。
天空橋朋花
……そう、ですか。
天空橋朋花
その子が……そう言ってくれたのですか……。
高山紗代子
はい。
天空橋朋花
うふふ、夢……叶ってしまいました……。
高山紗代子
おめでとうございます。
天空橋朋花
……長かった……夢、ようやく……。
天空橋朋花
…………。
高山紗代子
あれ? 店主……さん?
(台詞数: 50)