七尾百合子
目を閉じれば広がる空も…
七尾百合子
冒険の大地も…
七尾百合子
陽気な港町に吹く潮風も…
七尾百合子
堅牢な城壁に守られた王都も…
七尾百合子
崖の下の財宝も…
七尾百合子
深海の都も…
七尾百合子
残念ですけど、ここにはありません。
七尾百合子
だけど、私と貴方、二人で重ね合った手の中には、それ以上の夢物語が満ち溢れていると思います。
七尾百合子
今、感じることのできる温もりは、私達が老いてからもずっと、感じていられるでしょうか?
七尾百合子
すみません、少し無粋な問いかけをしてしまいましたね。
七尾百合子
歳を取るにつれて、皺は刻まれていくものですよね。
七尾百合子
きっと、それは二人で紡いできた幸せの数だけ刻まれるものだと思います。
七尾百合子
私がこれから語る話は、いつか私達が書き連ねるはずの共著の物語になります。
七尾百合子
ほんの些細な出来事がきっかけではじまる夢の様な物語。
七尾百合子
第一章、二人は指切りをするでしょう。一つの夢に向かって…
七尾百合子
一人は舞台で華やかに舞って、もう一人はそれを舞台袖から見守る日々が続きます。
七尾百合子
第二章、二人は互いの恋心に気付くでしょう。けれど、立場上、それは叶ってはいけない禁断の恋。
七尾百合子
二人は想いを秘めるようにして、互いを遠ざけて、鬱屈な時間を過ごしていきます。
七尾百合子
でもそれは、二人で交わした指切りを守るため。これが二人の初めての約束だから…
七尾百合子
その夢を叶えるまでは、この恋は叶ってはいけないものだと、二人は割り切ります。
七尾百合子
でも二人が抱いた恋慕の情は、どんなに時が経とうとも衰えることはありません。
七尾百合子
寧ろ、想いは深まっていくのでした。
七尾百合子
第三章、あの指切りが、ついには口づけと誓いに変わりました。
七尾百合子
それが意味するものは、二人の長年の夢と恋慕が叶う事と、二人の関係が一度幕を降ろすという事。
七尾百合子
破壊と再生、二人の世界は一新されます。夢の様な二人だけの新生活は、少し眩しくて戸惑います。
七尾百合子
はじめての連続に挫けそうになることもあるけれど、独りじゃない…
七尾百合子
二人で手を取り合って、着実に乗り越えていきました。
七尾百合子
互いの気持ちを確かめ合うように、求めあう夜もありました。
七尾百合子
二人の熱は混ざり合って、炎となります。その愛の炎は激しく燃え上がり、天まで昇ります。
七尾百合子
第四章、二人は子供を授かりました。男の子と女の子です。
七尾百合子
いままでは二人だけだったけれど、これでようやく家庭を築くことができますね。
七尾百合子
男の子は貴方の様に、女の子は私の様に育ちました。
七尾百合子
いつまでも笑顔が絶えない家族になりましたね。
七尾百合子
でも、その陰で貴方がどれだけ苦労をしていたのかを私は知っています。
七尾百合子
子供には、苦悩している姿なんて、貴方は一度も見せなかったけれど…
七尾百合子
あの子たちも気付いています。だって、二人とも貴方の様に優しいですから…
七尾百合子
子供たちが大きくなるにつれて、私も貴方も涙もろくなっていきます。
七尾百合子
貴方はいつも私の涙を拭ってくれるけれど、最近では貴方の方が大粒の涙を零しています。
七尾百合子
その泣き顔が可笑しくって、愛おしくって、私はついついクスっと笑みを零してしまいます。
七尾百合子
逞しくなったな、って言ってくれたけれど、私より子供たちの方が逞しく成長しましたよ。
七尾百合子
それが嬉しくて、貴方は泣いているんですよね。
七尾百合子
あの日、貴方は私を一生幸せにすると誓ってくれました。その誓い通り、私は物凄く幸せです。
七尾百合子
そして、本当はまだ透明なプロローグ。
七尾百合子
出逢いも、涙も、笑顔も、約束も…
七尾百合子
全部、私達の手の中にある。
七尾百合子
この一冊の本の中に…
七尾百合子
それでもいつかは、貴方の手を離さなくちゃいけない日が来ますよね。
七尾百合子
その時は、手のひらに残った温もりと、一緒に刻んだ思い出をそっと抱きしめたまま…
七尾百合子
私もそのまま眠ることにします。
七尾百合子
いい夢が見れますようにと…
(台詞数: 50)