七尾百合子
言ってなかったんですけど私、高所恐怖症でして。
七尾百合子
勢いで飛び込んでから、これは大変なことをしてしまったぞと、考えていたんです。
七尾百合子
そもそも重力とは万有引力と遠心力の差からなる力です。
七尾百合子
ロンドン中がペストで大混乱の時にニュートンさんが考えたそうです。
七尾百合子
凄くないですか? 普通そんなこと考える余裕ないですよね。
七尾百合子
私もその神経の太さを見習って……あ、やっぱ無理怖いです。
七尾百合子
だいたい落下が終わらないってどういうことですか。底無しじゃないですよね。
七尾百合子
それとも月の公転みたいに、遠心力で落下し続けてるんですか。
七尾百合子
でも空気抵抗を感じてるなら、やっぱりいつかは墜落しますよね。この説ナシで。
七尾百合子
だったら下から強烈な風が吹き続けてるとか。
七尾百合子
……その場合、落下先はとんでもない高圧になりませんか。あるいは扇風機フルスロットル。
七尾百合子
お母さんお父さん、ごめんなさい。百合子はもう駄目です。
七尾百合子
そんな感じで私は落下の恐怖に苛まれていました。
七尾百合子
だから恨まないでほしいんです。
七尾百合子
たとえウサギさんの呼びかけに、長い間気付かなかったとしても。
真壁瑞希
……お話は分かりました。
真壁瑞希
それにしても言い訳、長すぎませんか?
七尾百合子
すみません。
真壁瑞希
それと、「変なウサギ」って。
七尾百合子
すみません……。
真壁瑞希
いえ……責めるつもりは無かったんです。私も反省。
真壁瑞希
でも、着きますよ。
七尾百合子
へ?
真壁瑞希
もうすぐ着きます。
七尾百合子
あっ、ちゃんと終着点あるんですね!
真壁瑞希
はい……私たちは今、巨人の目から飛び込んでいます。
七尾百合子
巨人? 目から?
真壁瑞希
はい。じきに鼻へと抜けます。
七尾百合子
いろいろ分からないんですけど、まず目に飛び込めるんですか?
真壁瑞希
はい。節穴ですから。
七尾百合子
わ、ひどい言われ様。
真壁瑞希
……光が見えてきましたよ。
七尾百合子
本当だ。鼻から抜けた後は?
真壁瑞希
巨人の肩に着地します。
七尾百合子
え、着地? この勢いで?
真壁瑞希
はい。
七尾百合子
……嘘ですよね?
真壁瑞希
本当です。
七尾百合子
え、ちょっ待って心の準備と詠唱がまだ……!
真壁瑞希
行きます。
七尾百合子
嘘ですよね無理です複雑骨折です命があったら儲けもんです〜!
真壁瑞希
……着地。しゅぱっ。
七尾百合子
えっ?
真壁瑞希
目を開けてください。百聞は、一見に如かず。
七尾百合子
わあっ……!
真壁瑞希
見晴らしが良いでしょう?
真壁瑞希
この場所はすべてを展望します。人の営みも、森を駆ける狼も、真理でさえも。
真壁瑞希
……これを、あなたに見せたくて。
真壁瑞希
気に入って、いただけたでしょうか……うずうず。
七尾百合子
遠くてよく分かりません!
(台詞数: 50)