七尾百合子
まだ眠れないあなたへ。
七尾百合子
この手紙は夜に届けるように言います。と言うか明るい内は、他の人に見つかると面倒だし。
七尾百合子
と言うのも、信頼のできるメッセンジャーさんを見つけました。
七尾百合子
なので、この手紙もきっと早いうちに安全に着いていると思います。
七尾百合子
……
七尾百合子
……お元気、でしょうか。せめて心だけでも、治ってほしいと思っています。
七尾百合子
勝手に出ていって申し訳ありません。ですが、あんなあなたは見ていられませんでした。
七尾百合子
私に出来ることがあるなら、いえ……無くても、じっとなんてしていられませんでした。
七尾百合子
私は今、都へ行く船に乗っています。
七尾百合子
あなたには私が一人で、こんなに遠くに行くなんて信じられないかもしれません。
七尾百合子
と言うか、昔の私ですら信じられないと思います。
七尾百合子
ここに来るまでもいろんな事があって、きっと私は成長しました。
七尾百合子
友達だって、たくさん出来たんですよ。
七尾百合子
いろんな友達が出来て、知ってる人が増えて……
七尾百合子
もう会えない人も、できました……
七尾百合子
でも、だから私、やりたいことも出来たんです。
七尾百合子
最初は何も考えずに飛び出しました。ですが、あなたを救いたいという思いはありました。
七尾百合子
ですが、世界を見て知ったのです。
七尾百合子
失ったのは、私やあなただけではありませんでした。
七尾百合子
私は自分の小ささを思い知りました。世界は広く、とても深い。
七尾百合子
あれらによって負わされた傷はとても、深い。私達だけではなかったんですよ。
七尾百合子
そして、きっとあれで終わりではない……
七尾百合子
きっと、始まりだったんですよ。
七尾百合子
……だから私の目的は、少し変わりました。
七尾百合子
私は、戦おうと思っています。
七尾百合子
あ、少し変な物言いでしたね。戦うのではなく、抗うと言うことです。
七尾百合子
変わって行く世界は、それはそれで望んでいたことではありしたが、
七尾百合子
それを黙ってみている訳にはいかなくなりました。
七尾百合子
でも、安心してください。変わったのは目的だけで、私は変わらないままです。
七尾百合子
あなたと一緒に過ごした、あなたが認めた、あのときの私のままです。
七尾百合子
変わってしまった人を、この世界に変えられてしまった人も見ました。
七尾百合子
そういう風には、なりたくありませんから。
七尾百合子
……昔、あなたに夢を語った私を覚えているでしょうか。
七尾百合子
あなたはそんなのは無理だって言いましたが、私は今になってそれが分かりました。
七尾百合子
そこを離れた私は、あまりにも誰でもありませんでした。世界での私はとても小さい。
七尾百合子
朝は眩しいし、夜は寂しいです。
七尾百合子
早く、帰りたいです。
七尾百合子
……きっと、帰ります。都に着けば、きっと明日、全てが変わるはずです。
七尾百合子
その時にも手紙を出した方が良いでしょうか。
七尾百合子
いえ、やはり手紙はこれで最後にします。
七尾百合子
手紙を書くのは、哀しくはないですけど、少し寂しくなるので。
七尾百合子
これ以上続けると、変な事を書いてしまいそうなので、これで終わりにしておきます。
七尾百合子
……最後に
七尾百合子
私は……私のままで必ず、必ず無事に、帰ります。
七尾百合子
それまで、きっと待っていてください。あなたのままで、きっと無事に。
七尾百合子
私の愛する人が、愛する人より。
七尾百合子
……
七尾百合子
追伸、
七尾百合子
お姉ちゃんたち、やっぱり怒ってますか?
七尾百合子
後生です。うまーく、言っておいてください。
(台詞数: 50)