七尾百合子
私は生まれつき体が弱く病弱な体質だ。
七尾百合子
友達は疎か家族すらいない。
七尾百合子
そんな私に生きる価値があるのか…そんなことを毎日考えていた。
七尾百合子
ところがある日、一人の少女が私のもとに現れた。
七尾百合子
いや…現れたというより潜り込んできたといったほうが正しいか。
七尾百合子
どうやら彼女は【無人の家から奇妙な声がする】という噂を確かめに来たらしい。
七尾百合子
一体誰がそんな噂を流したのか知らないが、私にとってはどうでもいいことだった。
七尾百合子
どうせ生きていても何の価値もない私、周りがどうだろうがどうでもよかった。
七尾百合子
だが…彼女はそんな私に興味を持ったらしい。
七尾百合子
どうしてこんなところにいるのだとか、どうして一人なんだとか…色々と聞いてきた。
七尾百合子
正直私に構わないで欲しかった。ずっと一人にして欲しかった。
七尾百合子
だけど…あれから毎日、彼女は私の元に姿を現すようになった。
七尾百合子
そして、来る日も来る日も私に色んなことを聞き、色んなことを話してくれた。
七尾百合子
私の知らない日常…私の知らない景色…私の知らないことを楽しそうに話してくれた。
七尾百合子
そんな日々を過ごしているうちに、私は…彼女に恋心を抱いてしまった。
七尾百合子
今まで何にも興味を持たなかった私が…不思議と彼女に興味を持ってしまったのだ。
七尾百合子
そして…私たちは約束をした。
七尾百合子
『次の満月の夜に…私を外の世界に連れて行ってくれますか?』
七尾百合子
私がそういうと、彼女は快く引き受けてくれた。
七尾百合子
私の体は、どういうわけだか満月の夜にだけ調子が良くなるらしい。
七尾百合子
だから私は楽しみだった。次の満月の夜が待ち遠しかった。
七尾百合子
だが……
七尾百合子
約束の夜になっても…彼女は現れなかった。
七尾百合子
……私はきっと何か事情があってこれなかったんだと思い、その日は諦めた。
七尾百合子
だけど…次の日も……その次の日も………彼女が現れることはなかった。
七尾百合子
次第に、私の中に芽生えていた興味…そして、彼女への恋心が薄れていった。
七尾百合子
そして迎えた二度目の満月。
七尾百合子
……それでも、彼女が現れることはなかった。
七尾百合子
そして……私の心に微かに残っていた灯がふっと消え去った。
七尾百合子
私は、ゆっくりと立ち上がり…何かを書き始めた。
七尾百合子
そして、私は静かに筆を置き…
七尾百合子
この世を後にしたのだった…
(台詞数: 32)