七尾百合子
もしもーし。起きてくださーい。もしもーし。
七尾百合子
全然起きない…まったくもう。私が読みたがっている本、貸してくれるって約束したのに。
七尾百合子
気持ち良さそうな顔をして寝ているなぁ。楽しみにしていた私の気も知らないで…。
七尾百合子
いやっ!楽しみと言うのは本に対してであって、別にあなたに会えるとかそういうことじゃなくて…
七尾百合子
って、私ってばどうして寝ている人に対して弁解してしているの!?
七尾百合子
……本当に、寝ていますよね?実は起きていたりしません?
七尾百合子
……つん、つんつん。むに…むにー…。
七尾百合子
これだけやっても起きないんだ……。そ、それなら…。
七尾百合子
お、お邪魔しま〜…す…。よいしょ…っと。(ごそごそ)
七尾百合子
…………。
七尾百合子
(お、お布団に潜り込んでしまった!私ってば何をやっているの!?)
七尾百合子
(いくら起きないとはいえ、これはやり過ぎだよ!何だか恥ずかしくなってきた!)
七尾百合子
(…あの人の寝息が、耳元で聞こえる…これでも起きない…のかな?)
七尾百合子
(ッ!?…ね、寝顔…見ちゃった…しかもこんなに近くで…。)
七尾百合子
(………こんな寝顔なんだ。…油断してて、何だか可愛いかも。)
七尾百合子
(じゃなくて!早く出よう!あの人が起きる前に……って、ええ!?)
七尾百合子
お、おはようございます…よく眠れました…?
七尾百合子
はい。七尾百合子です…。夢ではなく、現実の…はい。
七尾百合子
ち、違っ!?これには深い理由があるんです!えっと、その…そう!小説です!
七尾百合子
最近読んだ小説に、こういうシーンがあったんです!本当ですよ!?それで真似を…。
七尾百合子
ち、違いますよ!?エッチな本なんかじゃありません!一般向けの恋愛小説です!
七尾百合子
ああっ!?れっ、恋愛小説の真似と言っても、ヒロインの気持ちを知りたいだけですからね!?
七尾百合子
別にあなたと恋愛したいとか、そう言うわけでは…ない…と、思い…ます。
七尾百合子
…どうして笑っているんですか?本当に違うんですよ?わかっていますか?
七尾百合子
…わかってるわかってる、って…あなたって、いつもそうですよね。そうやって余裕たっぷりで。
七尾百合子
こんな状況でも、顔色ひとつ変えないんですね…、もういいです…。
七尾百合子
……ヒロインの気持ちはわかったか?さぁ、わかりませんよ。シチュエーションが違うので。
七尾百合子
物語だと、主人公がベッドの中で寄り添うヒロインを優しく抱きしめたりするんですが…
七尾百合子
物語だと、主人公がベッドの中で寄り添うヒロインを優しく抱きしめたりするんですが…きゃっ!?
七尾百合子
急に抱きしめたりして!どうして簡単にそんなことできるんですか!?
七尾百合子
……本当は、ずっと緊張している?私が、隣にいるから…?
七尾百合子
あ……本当…ですね…。あなたの鼓動、すごく早い…。
七尾百合子
あれ?また早くなりましたね…もしかして、今こうしているのも、恥ずかしかったりします?
七尾百合子
おや、目を逸らしましたね?ということは、図星でしたか。
七尾百合子
えへへ、初めてあなたから一本取った気がします。風の戦士を甘く見ないでください。
七尾百合子
…え?この後の小説の展開ですか?えっと…物語のネタバレになりますが、いいですか?
七尾百合子
あの…物語の終盤で、主人公とヒロインが、離れ離れにならないといけなくなるんです。
七尾百合子
それで、その前夜に主人公がヒロインを抱きしめて、沢山の愛を囁いて…最後にこう言うんです。
七尾百合子
いくら時が流れても、私はあなたを愛し続けます…って。その後2人はお別れするんですが、後に…
七尾百合子
ひぅ!?で、ですから!急に抱きしめないでって言ったじゃないですか!何を考えて…
七尾百合子
………………えっ?
七尾百合子
ッ!!??な、ななな何を言っているんですか!?そ、そんなこと急に言われてもこの心の準備が
七尾百合子
…って、今のって本の真似…ですよね?
七尾百合子
うわーーん!!騙されたーー!!乙女心を弄ばれましたーー!!
七尾百合子
(…………なんてね。)
七尾百合子
(あなたの鼓動、さっきよりもドキドキしていますよ?言いませんけど。)
七尾百合子
乙女心を傷つけられました。私、もうお嫁に行けません…。
七尾百合子
…えっ、何かお詫びをしてくれるんですか?そうですねぇ…それでした…。
七尾百合子
ヒロインのこと、もっとよく知りたいので…その…。
七尾百合子
もうちょっとだけ、このままでいてくれませんか?
(台詞数: 50)