弱くてニューゲーム
BGM
透明なプロローグ
脚本家
nmcA
投稿日時
2016-10-02 23:44:38

脚本家コメント
これだけでも大丈夫ですが、ぜひ昨日の拙作「ベスト・パートナー」も併せてどうぞ。
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/800000000000086274/seq/113

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七尾百合子
【lilyknightさんがログアウトしました】
七尾百合子
……思わずログアウトしてしまった。いつもどおり振る舞おうと思ったのに
七尾百合子
「うう、aonoriさん、怒ってないかな……せっかくクエストのお誘いいただいたのに」
七尾百合子
いや、同じパーティのaonoriさんもだけど、もっと身近で大切な存在を気にしないと。
七尾百合子
分かってた。大事な友達だけど、私のほうが一つ年上。譲るべきは私だ。でも……
七尾百合子
パソコンにはゲームのオープニングムービーが流れている。
七尾百合子
漆黒の騎士と純白の騎士がお互い背を向けて多勢のゴブリンに立ち向かっている。
七尾百合子
「楽しかったなぁ……」
七尾百合子
ふと口を付いた言葉が、過去形になっていたことに気付く。
七尾百合子
赤く光るログインボタンの周りをカーソルをぐるぐると回す。
七尾百合子
何度も何度も繰り返しているうちに隣の青いボタンに目が止まった。
七尾百合子
「……そうだ!前から一回やってみたかったんだよね!」
七尾百合子
青い新規登録のボタンを押して、キャラ選択画面へと移る。
七尾百合子
「魔法使いもいいけど、やっぱり騎士だよね。名前はっと……」
七尾百合子
「おはぎのお供ってことで。ちょっと雪歩さんっぽいかな?さぁ、冒険の始まり……ですぅ!」
七尾百合子
チュートリアルをパパッとこなして、ギルドへ到着。どうやら洞窟でイベント戦らしい。
七尾百合子
「ふふふ、深緑の騎士が、いえ掘削王が黒の洞窟を理想郷へと変えてあげましょう…ですぅ!」
七尾百合子
気分もノッてきた。だんだんと雪歩さんの真似も慣れてきて楽しくなってくる。
七尾百合子
【ヘルプ要請が来ました】
七尾百合子
「ふふふ、さっそくビリジアンドリラーの評判を聞きつけた冒険者が現れたようで…すぅ!?」
七尾百合子
[aonori:誰か知らへんけど、近くにおるよしみで、ちょっとでええから助けてくれへん?]
七尾百合子
文字どおり頭を抱えた。複数アカウントなんてばれたくない。でも困っている原因は私。となると…
七尾百合子
aonoriさんに着いて行くといつものメンバーがいた。もちろんvivid_rabbitも。
七尾百合子
[vivid_rabbit:一緒に、頑張ろう?]
七尾百合子
騙すつもりはないだけに、vivid_rabbitの、杏奈ちゃんの優しさが痛い。
七尾百合子
ズバァ!ピシャーーン!\ギエピー/
七尾百合子
[rumirumi_festa:ええ、lilyknightとのコンビを見ているようでした]
七尾百合子
複数アカウントなんてやるもんじゃないね。嫌なことに気づいた。コンビプレーが上手ければ……
七尾百合子
[実は私、前のパーティに似た人がいて、その人とコンビを組んでて…]
七尾百合子
lilyknightである必要はないってこと。つまり、私である必要もないってこと。
七尾百合子
[楽しかったなぁ。お互いの背中を預けて、敵を斬り倒していくの!]
七尾百合子
いつの間にか口調もlilyknightの口調に戻り……手の甲に冷たいものが落ちる
七尾百合子
[でも、その子と喧嘩しちゃって。もう一緒に戦えないんだなって……]
七尾百合子
今日、私はニューゲームを選択した。lilyknightではないニューゲームを。
七尾百合子
[rumirumi_festa:……じゃあ、vivid_rabbitとコンビを組むです!]
七尾百合子
[vivid_rabbit:え?] [tea_friends:それは]
七尾百合子
[rumirumi_festa:2人の息はぴったりなのです。だから大丈夫なのです。それに]
七尾百合子
[rumirumi_festa:来ないlilyknightを待っても仕方ないですし?ね?]
七尾百合子
今まで軽快にキーボードを叩いていた指が鈍い。辛うじてvivid_rabbitとだけ打つ。
七尾百合子
そう、頭に浮かぶ漆黒の騎士と純白の騎士はもう背中を合わせることはないのだ……
七尾百合子
[vivid_rabbit:……そんなこと、ないよ。lilyknightは来るよ]
七尾百合子
滲んだ視界に純白の光が差し、画面の上に紫がかった長い髪を見た気がした。
七尾百合子
[vivid_rabbit:だって、lilyknightは……何も悪くない。悪いのは……]
七尾百合子
[vivid_rabbit:何よりわたしのパートナーはlilyknightだから!]
七尾百合子
袖で目をこすって、キーボードの上に手をかざす。ああ、頭と指がつながらない。
七尾百合子
【vivid_rabbitさんがログアウトしました】
七尾百合子
ログアウト表示のあとを追うように、電話がかかってきた。もちろん電話の主は……
七尾百合子
手元の電話に出る。そして、マウスで右上のボタンをクリックした。
七尾百合子
ここから始めるんだ。lilyknightとvivid_rabbitのニューゲームを!
七尾百合子
【tea_friendsさんがログアウトしました】

(台詞数: 50)