小さな思いの爆破(未遂)事件。
BGM
透明なプロローグ
脚本家
イッパイアッテサ
投稿日時
2016-04-17 13:33:28

脚本家コメント
今後ゲーム本編で、いわゆるエピソード0的なものが公表されるそうなので。
それに遅れをとるわけにはいかず、百合子が劇場に来た直後を創造して書きました。
…今後公式のほうの設定と齟齬を来すことになっても、どうぞご容赦ください。

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七尾百合子
『……それで。決めてきたのか?考える時間が欲しいって言ったから待ってたけど。』
七尾百合子
「……ええと、……その。」
七尾百合子
……人と話すのは苦手です。まして異性、しかも同年代でも親の年代でもない相手では。
七尾百合子
……いけない。こんなことで挫折してしまっては、大いなる道への小さな一歩も踏み出せません。
七尾百合子
……そうです。取り柄の無い私が、自分を変えたくて、決断したんです。アイドルを目指すって。
七尾百合子
この小さなテントが、私の劇場。そして眼前の男性が、私のプロデュース担当の方、です。
七尾百合子
いえ、『アイドルになる』ことは決心してます。生まれてはじめて、契約書も捺印しました。
七尾百合子
決めてこい、と言われてたのは……私を売り出すときの「イメージカラー」です。
七尾百合子
……
七尾百合子
『イメージカラー、ピンクにしてね!だって女子力高そうでしょ!!』
七尾百合子
……いつも劇場に猛スピードで乗り付けてる、私より少し年上の人。海美さん、だそうです。
七尾百合子
いかにも運動好きで体育会系な方です。私みたいに思い悩まず、即断できるのが羨ましいです。
七尾百合子
『このみ姉さん、ピンクにするの?じゃあ私もピンクにしよっと。』
七尾百合子
年長の方も同期です。今のは莉緒さん。……大人の人は、細かいことを気にしない強さがあります。
七尾百合子
……茜さんは『茜』色。琴葉さんは『リーフグリーン』。シンプルに決めた人も多いです。
七尾百合子
私だと……百合は『白』?それとも『黒』百合?……ワンクッション挟まって、しっくり来ません。
七尾百合子
……
七尾百合子
……ハァ、と心の裡で嘆息します。こんなことで躓いていては、今後やっていけないのかも。
七尾百合子
……
七尾百合子
本に没頭するのは楽しいし、本を読むこと、空想の世界を拡げることは私の生き甲斐。
七尾百合子
でもそれだけでは、ひとりの人間として自立することはできない……それは分かっているんです。
七尾百合子
親や先生、級友からも『百合子はもっと現実世界を直視した方がいい』、って言われてますし。
七尾百合子
私自身だって、いつもいつまでも本の世界の住人でいるわけにはいかない……とは、思ってます。
七尾百合子
創作された『登場人物』達は、成功者になるなり挫折するなり『運命』が与えられてますけど、
七尾百合子
所詮それは、『世界の創造主』たる作者が紡いだもので、『登場人物』は受容しているだけ。
七尾百合子
今の自分の『運命』に疑問を感じることもなく、自分で『道を開拓する』こともない操り人形。
七尾百合子
……
七尾百合子
……『創造主』の操り糸を外すことが出来ない、『登場人物』達。
七尾百合子
そして、誰からも操り糸を繋がれていない、拠り所無い、私という存在。
七尾百合子
……幸せなのは、どちらなのでしょうか。
七尾百合子
……
七尾百合子
……いけないいけない。また空想の世界に逃避してしまいそうです。
七尾百合子
進学や自己構成に悩み、様々な空想妄想に頭を占められ、漠然とした不安から逃れられない、私。
七尾百合子
そうそれは、例えるなら梶井基次郎の描いたあの青年。店先の果実を手にし一時の安寧を得た……
七尾百合子
「『檸檬』、ですね。」
七尾百合子
……
七尾百合子
『……イメージカラーは、レモンイエローで行くんだな、百合子。』
七尾百合子
……
七尾百合子
「えっ、あの……私もしかしたら、何か変なことを口走ってましたか!?」
七尾百合子
ううっ、恥ずかしいです……まさか空想していたことを、誰かに聞かれてしまうなんて!
七尾百合子
『俺はいいと思うぞ。若い清涼感を連想させながらも、青春の不安感を影に潜ませて。』
七尾百合子
『まあ仕掛けるのが、本屋じゃなくて劇場ってのは……画竜点睛を欠くけどな。』
七尾百合子
「……プロデューサーさん。まさか私、ずっと独りでボソボソ空想話をしてましたか?」
七尾百合子
『いや。俺が聞いたのは、檸檬って呟きだけだぞ。』
七尾百合子
『……プロフィールに趣味が読書ってあったからな。あるいはそう発想したのか、って推測だ。』
七尾百合子
『当てずっぽうみたいなものだから、違っていたら申し訳ないが……』
七尾百合子
「ち、違います!本当にそう考えてました!!ズバリ言い当てられて、びっくりしただけです!」
七尾百合子
……こんなことで、『アイドルとしての』私の第一歩は、やっと踏み出せたのです。
七尾百合子
……自分を理解してくれる人が居るのは、本当に幸せ……なんですね。
七尾百合子
私という『偶像』に、糸を繋げるプロデューサーさん。……これから、よろしくお願いします。

(台詞数: 50)