時を駆けずり回る少女。
BGM
Liar's good bye
脚本家
イッパイアッテサ
投稿日時
2015-08-09 22:13:11

脚本家コメント
タイムトラベルガシャから構想したドラマです。
タイムマシンと千早……という作品は多々考えられていることとは思いますが、
敢えて今更書いてみました。

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秋月律子
「たっだいまー!のり子、帰りのバイクの運転に気をつけてね。時間旅行で疲れてるんだし。」
秋月律子
「……さてと。時間旅行のリクエストは一通りこなしたかしら。まだ未体験なのは……」
如月千早
「……あの、律子?」
秋月律子
「そっか、千早はまだ体験してなかったわね。何処か行きたい時代とか、有る?」
如月千早
「……」
如月千早
「……律子!私を、あの事故の日に……」
秋月律子
「……」
如月千早
「……いえ、何でもないわ。また考えておくわね。……マリア・カラスの公演とか素敵そうね。」
秋月律子
「……タイムマシンは逃げないわ。今日はもう遅いし、そのうち教えてちょうだい。」
如月千早
「……お休みなさい、律子。また明日。」
秋月律子
……
秋月律子
……私が『発明した』タイムマシン。劇場のみんなの希望を聞いて時間旅行をしている。
秋月律子
もちろん、過去の改変やタイムパラドックスを引き起こさないよう細心の注意のもとに。
秋月律子
ゴミ一つ残していかないとか、写真に撮られないように気をつけるとか。色々言い含めている。
秋月律子
……事故に遭う人を救うなんて、言語道断だ。
秋月律子
……千早も頭ではキチンと理解している。でも多分……その件以外をリクエストすることは、無い。
秋月律子
「彼」を救えば、きっと『この現在』が改変される。蝶の羽ばたきレベルか竜巻級かは不明だが。
秋月律子
……タイムマシンの存在は、私の中に秘めておくべきだったのかもしれない。
秋月律子
隠し事にし続けられなかったのは……単に、一人ひた隠す孤独さに耐えられないからだ。
秋月律子
……
秋月律子
……私が抱えているものは重過ぎる。その一部だけでも手放さなければ、私が崩壊しかねない。
秋月律子
……タイムマシンの存在を『公表』したのは最近。『完成』したのは、本当はもっと昔。
秋月律子
試運転で選んだ旅先は、現在より10年も遡らない頃。私が暮らしている日本。
秋月律子
時間遡行が完了した瞬間……耳を劈くブレーキ音と、衝撃的な光景が飛び込んできた。
秋月律子
咄嗟に手を伸ばし、掴んだままに歩道側に放り投げた。
秋月律子
……小さな女の子を。
秋月律子
……奇跡の救助に、歓声は湧かなかった。……目の前で、事故は起きてしまったから。
秋月律子
……流れる赤いもの。転がった小さな靴。横たわる……男の子。
秋月律子
……
秋月律子
……タイムマシンを再起動した。デフォルト設定してある『現在』の時間軸に、逃げるために。
秋月律子
タイムマシンの存在を隠さねば、などとは微塵も考えなかった。……たった一つの恐怖に震えてた。
秋月律子
歴史を変えてしまった……。救われなかった筈の人を、救ってしまった。
秋月律子
……
秋月律子
級友から、その弟妹、その同級生と辿って情報を集めた。……救った少女の名は、如月千早。
秋月律子
あの日事故に遭ったのは、彼女の弟。その後家庭が崩壊し、彼女は消息不明になったこと……
秋月律子
……歴史の『復元』かもしれない。居なかった筈の人間が、消えていくのは妥当かもしれない。
秋月律子
だけど!救われた人が結局消えねばならないなんて、理不尽よ!
秋月律子
……それから、私の暗躍が始まった。彼女の周りに、何度もタイムトラベルして。
秋月律子
歌が好きだったという、微かな希望を灯し続けるために。天上から蜘蛛の糸を垂らす思いで。
秋月律子
学芸会で彼女が歌うよう仕組んだり。ポストにアイドル募集のチラシを挟み込んだり。
秋月律子
同じ事務所に来た彼女に、『私』を呼び捨てさせるよう、その時の『私』に匿名メールしたり。
秋月律子
……
秋月律子
……もう一度、私があの事故の日に行けば早いのは分かる。今度こそ二人とも救えばいい。
秋月律子
あるいは……二人とも救わなければ、いい。
秋月律子
……全く同じ場面に複数回行くのは危険すぎる。それこそ、タイムパラドックスを引き起こす。
秋月律子
いや……それも自己弁護だ。要は、二人とも救う自信が無く、二人とも見殺す勇気も無い。
秋月律子
……
秋月律子
……歌を歌い、仲間に恵まれ、今の彼女……「千早」は、安定して、ここに在る。
秋月律子
私は彼女を、見守り続けなければならない。それが、時間旅行の禁忌を犯した私に下された使命。
秋月律子
……彼女を在らしめ続けねば。その思いこそ私の増長かもしれない。私には、正解を導けない。

(台詞数: 50)