七尾百合子
「脱出しちゃった……。志保すごいね!」
矢吹可奈
「さすが志保ちゃん!友達として光栄だよ!」
北沢志保
「きゃっ。……もう、可奈。いきなり抱きつくのはやめなさいって」
北沢志保
私は、可奈と百合子さんと一緒に、事務所のテレビで自分が出演した脱出ゲームの番組を見ていた。
北沢志保
テレビは私が事務所を脱出した後、それまでのダイジェストが流れると、CMに切り替わった。
矢吹可奈
「でも志保ちゃん、本当によく分かったね。私なんか全然だったよ〜…」
七尾百合子
「私も最初の問題は分かったけど、後から難しくなって、途中でギブアップしちゃった」
北沢志保
収録が終わった後に聞いた話だと、この脱出ゲームの収録は私以外にもやってたみたいだった。
北沢志保
でも、実際に脱出できたのは何人かで、可奈と百合子さんは脱出できなかったらしい。
北沢志保
「……最後の問題は意外と分かったわ。……百合子さんの、おかげです」
七尾百合子
「……あっ。やっぱりそうだったんだ。……志保の助けになってよかったよ」
北沢志保
百合子さんは、少し照れるように笑っていた。
北沢志保
最後の問題は、その他の問題とは少し違っていて、だからこそ、すぐに分かった。
北沢志保
写真に写っていた12人の共通点。それは、12人がやった同じ仕事の事だった。
北沢志保
ーーブライダルの撮影。それが、12人全員がやった同じ仕事だった。
北沢志保
そして、その共通点からの女神っていうのは、百合子さんが前に言っていた。
北沢志保
ブライダルの撮影をした律子さんに、「ジューンブライド」の意味を百合子さんが力説していた。
北沢志保
確かあの時はーー
七尾百合子
「ジューンブライドって、『JUNO』という女神の名前をもじってたって知ってましたか⁉︎」
七尾百合子
「諸説や意味は他にも色々あるんですけど、やっぱり私はこの女神の名前だと思ってます!」
七尾百合子
「それに、この『JUNO』っていう女神には色々な物語があってですね! それがなかなかーー」
北沢志保
ーー律子さんが引き気味になってたから、よく覚えてる。このおかげで、問題が分かった。
北沢志保
最後の問題は『JUNO』。それがあの金庫のパスワードだった。
矢吹可奈
「? 志保ちゃんどういうこと?」
北沢志保
内容を理解してない可奈が聞いてきて、その事を説明しようかと思ったけど、
七尾百合子
「〜〜〜〜!」
北沢志保
恥ずかしいのか、百合子さんは首をぶんぶん振っていた。言っちゃダメってことかしら?
北沢志保
「……内緒よ。私と百合子さんの、2人の秘密だから」
矢吹可奈
「ええ〜!」
北沢志保
「……そんな事より、そろそろレッスンに行かないと。もうそろそろ、時間でしょ?」
七尾百合子
「そ、そうだね。確か今日はプロデューサーさんも見にくるって言ってたから急がないと」
矢吹可奈
「そうだけど……気になるよお〜」
北沢志保
「……プロデューサーさんが、見にくるんだ」
矢吹可奈
「……志保ちゃん? 何で赤くなってるの?」
北沢志保
「! べ、別に赤くなんてなってない。……は、早く行くわよ」
北沢志保
私は立ち上がって、2人を置いて事務所の扉に向かう。
北沢志保
…………。
北沢志保
……正直、今回の脱出ゲームは、少し心細い部分もあった。
北沢志保
謎を全部解くことは出来たけど、それでも、みんなに助けられた部分は少なからずあった。
北沢志保
次があるかはわからないけど、今度はーー
北沢志保
「……1人じゃないと、いいけど」
北沢志保
その言葉は、後ろの2人には聞こえなかったみたいだった。
北沢志保
私は、事務所の、元に戻ったノブに手を掛けて、回した。
北沢志保
今回はちゃんーー開いてくれた。
北沢志保
END
(台詞数: 45)