七尾百合子
……眠れない。
七尾百合子
理由は分かっている。日付が変わって、もう私の誕生日。ネットゲームで沢山祝福してもらった。
七尾百合子
夜が明ければ家族に祝ってもらえる。学校では学友に。劇場では仲間に。
七尾百合子
そして……プロデューサーさんに。
七尾百合子
……プロデューサーさんは、私にどんな言葉を掛けてくれるのだろうか。
七尾百合子
グラスを二つ捧げ、おもむろにシャンパンを注いで、一つを私に手渡して……
七尾百合子
『君の瞳に、乾杯』、とか……いや
七尾百合子
……プロデューサーさんは未成年飲酒を勧める人じゃないですよね。でもジュースでは間抜けだし。
七尾百合子
……それじゃあ、掌の小箱の蓋を開きながら、心を永遠に捕らえる宝具を取り出して……
七尾百合子
『百合子の残りの人生と、僕の残りの人生を等価交換しないか?』とか……
七尾百合子
……冷静になれ、百合子。結婚できない年齢の子に、そんなこと言ったら、流石に引くでしょ。
七尾百合子
……そうだ!誕生日を迎え大人になった私に、大きな秘密を打ち明けるんじゃ!
七尾百合子
『百合子……僕は、幼い時の百合子を知っている。その時から、百合子をアイドルにしたかった。
七尾百合子
その為に青年だった僕は、プロデューサーの道を選んだ。いつか、百合子を迎えにいく為に。
七尾百合子
僕の目に狂いは無かった。百合子は今や、かけがえのない魅力を持つアイドルになった。
七尾百合子
でも……僕は今日、百合子のアイドルとしての人生を終わらせねばならない。
七尾百合子
なぜなら……僕は、抱いていたもうひとつの夢を叶えたいんだ。
七尾百合子
それは……百合子、君を僕の伴侶とすることだ。
七尾百合子
百合子……アイドルという夢から醒めて、もう一つの夢を見てくれないか。』
七尾百合子
……
七尾百合子
……ううっ、なんでここまで空想が広がってしまっちゃったんだろ。我ながら恥ずかしい。
七尾百合子
今さっき、15歳の娘に求婚するなんて、ちょっと……って考えていたのに。
七尾百合子
だいたい!この展開だと、私を見初めた理由は『自分の母親に似てるから』ってことじゃない。
七尾百合子
……
七尾百合子
……でも、もしも。もしもだけど……
七尾百合子
……私が16歳を迎える誕生日が来たら。その時求婚される事が有ったら……
七尾百合子
……
七尾百合子
…………
七尾百合子
………………駄目だ。このままだと本当に眠れぬ夜になっちゃう。頭がドンドン回ってく。
七尾百合子
……
七尾百合子
……あの後、なんとか寝付けて良かった。誕生日を寝不足で迎えるのは、流石に……
七尾百合子
あ……ぷ、プロデューサーさん!お、おはようございます……
七尾百合子
(ダメ!眠る前に空想した『夢』が、私の頭と心を染め上げてしまいそう!)
七尾百合子
プロデューサーさん、お祝いの言葉は、少し待ってください!私、まだ心の準備が……
七尾百合子
……え?だって、『一つ』大人になった(16歳の)私は、
七尾百合子
(プロデューサーさんが秘めた想いという)世界の『秘密』を知らされ、
七尾百合子
(プロデューサーさんという)仲間と一緒に、
七尾百合子
(人生という)冒険の旅に、(二人で……)……
七尾百合子
……出ないんですか?えーっ!?
(台詞数: 39)