七尾百合子
「お待たせしました。あ、あの、この格好……可愛いですか?」
七尾百合子
『……あ、ああ。可愛いよ』とプロデューサーさん。満更でもないようだ。良かった……。
七尾百合子
「あ、ありがとうございます……。ぷ、プロデューサーさん。さっそくなんですけど……」
七尾百合子
「お願い事、何でも1つ聞いてくれるんですよね?それじゃあ……」
七尾百合子
「お姫様抱っこしてください!」
七尾百合子
『却下』と即答するプロデューサーさん。
七尾百合子
「えええぇぇ!なんでですか!?プロデューサーさんの嘘つき!いじわる!ドS!」
七尾百合子
抗議の声を上げる私。それはそうだ。ずっと楽しみにしていたんだから。
七尾百合子
『冗談だよ』と、笑いながら、プロデューサーさんは私に近付き……
七尾百合子
私を、ひょいっと抱き抱えた。
七尾百合子
「わ、わ……」
七尾百合子
(これが、念願の……お姫様抱っこ!)
七尾百合子
好きな人にお姫様抱っこをされている。その事実だけで、顔が熱くなり、想いが加速する。
七尾百合子
(好き。大好き……。プロデューサーさん……)
七尾百合子
(きょ、今日こそは……絶対振り向かせて見せる!)
七尾百合子
『いかがですか?お姫様』と聞かれたので……
七尾百合子
「さ、最高です。え、ええっと……あそこのソファーまで運んでください……」と答える私。
七尾百合子
プロデューサーさんは、私を抱き抱えたまま、ゆっくりとソファーに向かう。
七尾百合子
そして、ソファーの上に私を優しくおろそうとしたところで……
七尾百合子
私は、プロデューサーさんの首に腕を回し、えいっ!と私の方へ引っ張った。
七尾百合子
『おっと!』……プロデューサーさんは姿勢を崩し……私の上に、覆い被さる。
七尾百合子
息がかかる距離まで近付く、お互いの顔。
七尾百合子
ち、近い!自分でした事とは言え、やっぱり恥ずかしい。ドキドキする……。
七尾百合子
……キス、したい。
七尾百合子
「プロデューサーさん。私が今、何をして欲しいか……わかりますか?」
七尾百合子
いくら女性からの好意に鈍感なプロデューサーさんと言えど、さすがにわかったようだ。
七尾百合子
それでも、なかなか実行に移してくれない。んもうっ!意気地無し……。
七尾百合子
「……ぶっぶー。時間切れです。もう……わかってるくせに……」
七尾百合子
「正解は……これです……」
七尾百合子
私は、おずおずとプロデューサーさんの背中に腕を回し、抱きつき、顔を近付け……
七尾百合子
その唇に、キスをした。
七尾百合子
「んんっ……」
七尾百合子
(すごい、これが……キスなんだ……。)
七尾百合子
何度も何度も思い描いてきた、初めてのキスは……
七尾百合子
私が長年に渡って想像してきたキスよりも、ずっとずっと甘く、幸せなものだった。
七尾百合子
(はぁ……はぁ……。つ、ついに……しちゃった……)
七尾百合子
プロデューサーさんは真っ赤になりながらも、優しい微笑みを浮かべている。
七尾百合子
恥ずかしさに耐えきれず、横を向く私。
七尾百合子
……まだだ。一番大切な事を伝えていない。再び正面を向き、プロデューサーさんを見つめた。
七尾百合子
「……覚えていますか?プロデューサーさん」
七尾百合子
「私が、以前の誕生日に、あなたにおねだりしたものを……」
七尾百合子
あの時は、『1日独り占めしたい』という意味だったけれど、今度は違う。
七尾百合子
「私……」
七尾百合子
もう一度、あの時と同じ台詞で、私の気持ちを伝えたい。
七尾百合子
「私、お誕生日プレゼントに…………
七尾百合子
「私、お誕生日プレゼントに…………プロデューサーさんが欲しいです……」
七尾百合子
「……私だけのプロデューサーさんに、
七尾百合子
「……私だけのプロデューサーさんに、なっていただけますか……?」
七尾百合子
そう言い終えて、祈るように目を閉じた私の唇に……
七尾百合子
愛しい人の、甘い温もりが触れた。
(台詞数: 50)