七尾百合子
私達の住んでる世界をジグソーパズルに例えるならば
七尾百合子
私の存在は、この世界においてちっぽけな一つのピースでしかないのでしょう
七尾百合子
人が淋しくならないように暗闇を優しく照らすお月様を窓越しに見ながら私は思いふけっていた
七尾百合子
視線を下に落として道のほうを見れば、人々が夜だというのに忙しそうに行き来をしている
七尾百合子
スマホを片手に話しながら歩く人、友人達と大声で騒ぐ人、無言でむすっと歩く人
七尾百合子
大都会と呼ばれているこの街ではごく当たり前の光景なのだけれど
七尾百合子
この人達に共通して言えることが一つある
七尾百合子
それは、皆が自分の事だけに夢中であって、それ以外の周りの事に関してはまったく関心がないのだ
七尾百合子
まあ、至極当たり前のことなのだけれども…
七尾百合子
だって私達はみんな、名前も、住所も、職業も、性格も知らない赤の他人な訳だから
七尾百合子
でも、この赤の他人というピースが集まって、地域や、社会ができるのだから
七尾百合子
ただ、他人だから…で済ませてしまうのは、私は違う気がするのです
七尾百合子
何故なら私達は皆、間接的には知人である可能性が高いのだ
七尾百合子
でもまあ、知人と友人という関係については絶対的差があるのですが…
七尾百合子
私は窓から見える間接的な知人達を観察して
七尾百合子
彼等がどのようなバックグラウンドというピースを持っているのか想像をするのが好きです
七尾百合子
もしかしたら好きという感覚とは少し違うのかもしれませんが…
七尾百合子
だって私は想像をすることで垣間見ることのできる知人達の人生模様を介して
七尾百合子
私の中に深く根付く寂寥感や虚無感を少しでも満たそうとしているだけなのだから
七尾百合子
私は、私にとっての世界の窓から見える彼等の日々を繋いで
七尾百合子
少しでも救われた感情に浸りたかっただけなのかもしれない…
七尾百合子
だって私は…
七尾百合子
「百合子さん、また夜更かし?消灯時間はとっくに過ぎてるわよ」
七尾百合子
すみません…少し考え事をしていたら、眠れなくなってしまって
七尾百合子
「そっか、でも年頃の女の子なんだから、早く寝ないと肌に悪いわよ」
七尾百合子
そうですよね、ごめんなさい…もう寝ますから
七尾百合子
…見回りに来た看護師さんは私に優しく微笑むと、病室を後にしていった
七尾百合子
おやすみなさい…
七尾百合子
…私は小さく呟くと、また窓の外に視線を移す
七尾百合子
線香花火が夏の思い出とともにすぐ散ってしまうのと同じように
七尾百合子
私は私自身の命の灯火がもうすぐ消えてしまうのを知っている
七尾百合子
~ピース(日々)を繋いで…~
(台詞数: 32)