矢吹可奈
気が付くと、あれだけうるさかったセミの鳴き声が聞こえなくなっていた。
矢吹可奈
うだるような暑さもどこかに消え、私は過ごしやすさと共に夏の終わりを感じていた。
矢吹可奈
「久し振りの事務所♪目指せ主演女優賞♪」
矢吹可奈
夏休みを利用した長期の映画ロケを終えた次の日、私は久し振りに事務所を訪ねた。
矢吹可奈
遠くでひぐらしの鳴く声が聞こえる。
矢吹可奈
「おはよ～ございま～す!矢吹可奈、ただいま戻りましたよ～!」
矢吹可奈
しかし返事は無く、事務所には誰も居なかった。
矢吹可奈
「あれ?みんなまだ来てないのかなぁ?」
矢吹可奈
いや、正確には一人だけ事務所には人が居た。百合子が机に突っ伏して寝ているようだった。
矢吹可奈
「百合子ちゃん、おはぎ持ったまま寝てるなんて疲れてるのかなぁ?」
矢吹可奈
「ちょっと静かにしてようっと。」
矢吹可奈
よく見ると百合子の近くには一枚のメモがあった。
音無小鳥
『しょうゆが切れたので買ってきます。』
音無小鳥
『ほかに欲しい物があったらメールしてください。』
音無小鳥
『がそりんも切れそうなので入れてきます。』
音無小鳥
『やす売りしている所を探しながら行くので、』
音無小鳥
『ばあいによっては遅くなるかも知れません。』
音無小鳥
『いそぎの用がある時は電話して下さい。』
音無小鳥
『にばい速で帰って来ます。』
音無小鳥
『げーむをやり過ぎないように注意して下さい。』
音無小鳥
『てれびの見過ぎにも注意して下さい。』
矢吹可奈
「そっか、小鳥さんは買い物か。プチシュー頼んだら買ってきてくれるかなぁ?」
矢吹可奈
「でもテレビやゲームの時間を注意するってお母さんか。」
矢吹可奈
「あ～、みんな早く来ないかなぁ。」
矢吹可奈
ひぐらしの声はさっきより大きく聞こえていた。
矢吹可奈
\カナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナ/
(台詞数: 26)