七尾百合子
……あれ、ひなたちゃん何をしているの?
木下ひなた
ああ、これか?畑を耕すんで、土を整えていたんよ。
木下ひなた
百合子さんもどうしたんさ…何か元気なさそうだな…
七尾百合子
……。
木下ひなた
まあ、無理に話さんでもいいけどな。時間が解決する事もあるよ。
七尾百合子
いや…そこまで、致命的な事じゃないよ。……ただね、
七尾百合子
ドラマシアターの話に行き詰まっていてね。前に読んだ本から参考にしようと思ってね
木下ひなた
ああ…この劇場につまれていた本、あれは百合子さんのだったか…
七尾百合子
私も、裏庭にひなたちゃんの農園があるなんて知らなかったな…
木下ひなた
社長さんから許可もらえてな。感謝してるよ
七尾百合子
ここは、日が当たっていて…落ち着きますね。
七尾百合子
……できれば、もう少し早くこの場所知っておきたかったな
木下ひなた
やっぱり、元気ねぇな…オーディションに受からなくても気に病まないでな
七尾百合子
そういう訳じゃないんですけど…誤魔化しきれないんで正直に話しますね
七尾百合子
この間、ドラマシアターコンテストがあったんですけど、みんないい話ばかりで
七尾百合子
私も、自分のできるかぎりいい作品を作ろうと脚本を練り、投稿したんだ
木下ひなた
……あたしもみたけど、みんな、面白くできてるもんだなぁ
七尾百合子
普段使う事のない立ち絵で、それを生かす最高のシナリオのつもりだった
七尾百合子
けれど、違っていた…私の話は、アイドルのみなさんの良さを潰していた…
木下ひなた
予選通過もそれだけ厳しかった訳なんだろ…
七尾百合子
結局の所、自分のエゴを押し付けていたんですよ。
七尾百合子
私の作品は、落ちました。通過作品を見たら負けを認めるしかないです。
七尾百合子
それで、自分の原点をみつめ直そうとして、この本を取りにきました。
木下ひなた
私もな、オーディションに落ちたりするとさ、故郷が恋しくなるんよ…
木下ひなた
東京はさ、なんだか急かされている感じがして、やりづらくてな…
木下ひなた
でも、簡単に戻る訳にもいかんだろ…だから、こうして畑を耕そうとしてんさ
七尾百合子
劇場を引っ越してから、ここに来なくなりましたからね。いい場所だね
木下ひなた
そうだろ。土の匂いや日の光を浴びて、実家の畑を思い出ていたんよ
木下ひなた
まあ、小細工みたいな感じがするけどな
七尾百合子
小細工じゃないよ。ひなたちゃんの造り上げた世界は、暖かい所だよ
木下ひなた
あ、ありがとな
七尾百合子
まあ、私も今スランプ中だから、あまり説得力ないかな?
木下ひなた
百合子さんの書いた話なんだけどさ、あたしがよく笑っていたな……
七尾百合子
本当ですか?あれは、お気に入りなんですよ!
木下ひなた
ただ…あんなに方言なまりは、ねぇよ
七尾百合子
う…
木下ひなた
けど、百合子さんの中であたしは、あんな風に笑っている娘なんだろ
木下ひなた
だから、その…それをエゴとかって呼ぶの止めてくれないか?
七尾百合子
そうだね…ごめんなさい
木下ひなた
忘れる事は、無理でもこれからの事を考えないか?
七尾百合子
これから…ですか?
木下ひなた
この辺を農地にしたらスイカを植えるつもりなんよ
木下ひなた
夏場に向けて協力してくれねぇかな?
七尾百合子
わかりました。ひなた先生、お手伝いします。
木下ひなた
先生は、ちょっと照れくさいなぁ…それじゃあ、お願いするよ
木下ひなた
百合子さんが協力してくれるんだ、旨いのが作れるよ!
七尾百合子
うん。楽しみだね
七尾百合子
(もし私が、予選通過していたら、ひなたちゃんの農園を知らずにいたよね)
七尾百合子
(ひなたちゃんに感謝するよこの世界の秘密を知れた事…)
(台詞数: 49)