高山紗代子
えーと、着替えとハンカチと、ミックス粉とあんこと……
松田亜利沙
紗代子さあん!
高山紗代子
亜利沙ちゃん!どうしたのこんな時間に?
松田亜利沙
大人達が話してるの聞いたんです!もしかして本当に行くつもりなんですか?
高山紗代子
あ、うん。そうだけど?
松田亜利沙
あ、軽い。これ分かってないパターンだ。
松田亜利沙
良いですか紗代子さん!中央って、とっても遠いんですよ?
松田亜利沙
いやーそろそろ疲れたからお昼寝しにお家かーえろ!
松田亜利沙
とかいう距離じゃないんですよ?気軽に行き来できません。
松田亜利沙
あの人達が乗ってきた乗り物見たでしょ?あんなん使わないと行き来出来ないんですよ!
高山紗代子
あー、速かったよね。あれ。聞いてないのにいきなり来るからびっくりしたよ。
松田亜利沙
紗代子さんホントに恒温動物ですか!?もしかしたら、帰らせてもらえないかもしれません……
高山紗代子
かもねえ。だからこうやって準備しなきゃ、大変だよ。
松田亜利沙
なんで、それなのになんで行っちゃうんですか。
高山紗代子
……あの人達が住んでる所はね、ここより本当にたくさんの人がいるんだって。それに……
高山紗代子
大きな物もあるらしいから、きっと行くべきなんだって。
松田亜利沙
またよく分かんない事言ってる……。ここはどうするんですか?見捨てちゃうんですか。
高山紗代子
大丈夫だよ。伝えるから。お父さんには言ってあるし。
松田亜利沙
神父さんは良くても、教会の、信者の皆にはなんて説明するんですか!
松田亜利沙
っていうか神父さんに言ってありさに言ってないのちょっとショック!
高山紗代子
あ、それは……
高山紗代子
亜利沙ちゃんからうまく言っといて。そういうのうまいじゃない?
松田亜利沙
やったことないですよそんな説明!?
松田亜利沙
っていうか、朝礼とか庭の手入れとかお掃除諸々の当番は……
高山紗代子
亜利沙ちゃんそういうのうまいし……
松田亜利沙
全然何も考えてない!
松田亜利沙
ありさは……嫌ですよ。
高山紗代子
……
松田亜利沙
紗代子さんは、皆と、ありさと離れ離れになって、平気なんですか。
松田亜利沙
ここって、紗代子さんにとってその程度なんですか?
高山紗代子
……
高山紗代子
勿論私は、ここが好きだよ。お父さんも亜利沙ちゃんも、皆も。
高山紗代子
そんな知らない街なんかより、皆のことが大好き。でもね。
高山紗代子
多分私は、ここだけの物じゃないから。
高山紗代子
きっと全部の命の……この星の物なんだよ。私は。
松田亜利沙
そんな!紗代子さんはありさだけの物って約束したのに!
高山紗代子
ちょっと待って覚えがない。そんな約束したっけ?
松田亜利沙
少なくとも、ちょっと前まではここの人達だけの紗代子さんでした。
松田亜利沙
……今日、一緒に寝ても良いですか?
高山紗代子
困ったなあ。一晩かけて説得しないとだね。
松田亜利沙
……
松田亜利沙
……翌朝、私は彼女を見送らなかった。
松田亜利沙
寝過ごしたわけでも、拗ねていたわけでもない。その時から既に考えていたからだ。
松田亜利沙
数年後、私の神様は皆の神様になった。彼女を知らない者たちが私達と同じ言葉で彼女を賛美した。
松田亜利沙
まず私は、彼女の存在を大きくすることに努めた。彼女の存在は、そのまま私達の力になるから。
松田亜利沙
その速度は凄まじく、瞬く間に神の名はその偉業とともに世界に広がった。
松田亜利沙
私達が世界の一翼と言われるまで大きくなったとき、世界に変化が起きた。
松田亜利沙
彼女は世界で最も高い場所に閉じ込められたのだ。それは私達との距離と、力をさらに大きくした。
松田亜利沙
彼女を神とする事で力を得た私達の目的は、あの日から一つ。
松田亜利沙
彼女を塔から解き放ち、神でなくすることだ。
(台詞数: 50)