高山紗代子
私、自分の誕生日があまり好きじゃなかったんです。
高山紗代子
ほら、もう冬休みが始まっているじゃないですか。
高山紗代子
他のみんなはクラスのみんなに祝ってもらえるのに、って思ってました。
高山紗代子
え、今ですか?
高山紗代子
今は気にしていませんよ。それに、事務所のみんなが祝ってくれますから!
高山紗代子
はい、この神社です。……ヘクチッ!
高山紗代子
いえ、大丈夫です!今、事務所に戻ってもみんな困っちゃうでしょうから、しばらく、ここで。
高山紗代子
それに……バースデーライブであんなに気持ちよく歌えたんです。少し余韻に浸りたいなって。
高山紗代子
……
高山紗代子
……実は私、小学生の頃、家出したことがあるんです。
高山紗代子
意外……ですか?私だって子供の頃があったんですよ。
高山紗代子
私の誕生日だっていうのに両親が弟のことばかり構うもんですから、つい。
高山紗代子
でも、家出なんて初めてで。とりあえず漫画みたいに野宿しよって、この神社に来たんです。
高山紗代子
とりあえず、床下かなって思って境内の下をのぞいた時でした。誰かと目が合ったんです。
高山紗代子
ビックリしました。神社の床下に先客がいるなんて思ってもいませんでした。
高山紗代子
でも、それは向こうも同じだったみたいで。お互いにキャーって叫んで、床下から出てきて、
高山紗代子
神社の中を走り回って、賽銭箱の前でまた鉢合わせして……今度は笑い合ったんです。
高山紗代子
聞いてみるとその子も今日が誕生日だったらしくて、私たち、すっかり意気投合しちゃいました。
高山紗代子
2人きりの神社でたくさん遊びました。落ち葉をかき集めてばらまいたり、地面にお絵かきしたり。
高山紗代子
ああ、ちょうどこの辺りですね。私は地面にお姫様の絵を描いていたんです。
高山紗代子
すると、神楽舞台の上にいたその子が急にこっちを向いて、手を伸ばしてきたんです。
高山紗代子
「ねぇ、一緒に踊ろう!一緒に歌おう!」って
高山紗代子
私は何を言われたのかよく分からないまま、その手を取り、舞台に立ちました。
高山紗代子
……あの、変なこと言いますけど笑わないでくださいね。
高山紗代子
その時に見た景色が、ライブで見る景色そっくりだったんです。
高山紗代子
分かってます。真冬の寂れたモノクロな神社にヴィヴィッドな色彩があるわけありません。
高山紗代子
でも、私はつぶやいちゃったんです。「こんな場所で歌いたい」って
高山紗代子
隣にいたその子は私の顔を見て、ただギュッと手を握り返してくれました。
高山紗代子
私の初めてのライブが始まりました。お客さんもプロデューサーもいない二人っきりのライブ。
高山紗代子
落ち葉の残った神楽舞台で、小枝をマイク代わりに歌って、北風を声援に踊って……
高山紗代子
何曲目だったかは覚えていません。口から出る白い息を見ながら、腰をついていた時でした。
高山紗代子
じっと客席を見ていたその子が急に振り向いて、また私に手を伸ばしてきたんです。
高山紗代子
「おっきくなっても一緒に歌おうね!」って
高山紗代子
私は息を整えてすぐにその手をとりました。そして、右手の小指をその子に向けました。
高山紗代子
「じゃあ、有名になったら、誕生日にここで一緒に歌おうね!」って言って。
高山紗代子
……そうですね、それからです、私がアイドルを目指したのは。
高山紗代子
その子……ですか?実は会えていないんです。
高山紗代子
時々立ち寄りますし、誕生日には必ずここに来ているんですけど。今日も……ですね。
高山紗代子
でも、その子のおかげで私は自分の誕生日が好きになれたんですよ?
高山紗代子
だって、楽しかった想い出が蘇るじゃないですか!あの子と歌えるかもって思うじゃないですか!
高山紗代子
もちろん自分の努力が必要だって分かってます。それでも、やっぱりワクワクするんです。
高山紗代子
あっ……そろそろ時間ですか?
高山紗代子
ありがとうございました。付き合っていただいて。
高山紗代子
さぁ、帰りましょう。みんなが待ってます。どんな飾りつけになっているか楽しみですね!
高山紗代子
そうだ。パーティが終わったらレッスンお願いしますね。
高山紗代子
え?今日もやるのかって……
高山紗代子
当然です!誕生日でもお正月でもレッスンは休みません!
高山紗代子
だって、私は一流のトップアイドルになるっていう、あの子との約束があるんですから!
(台詞数: 48)