高山紗代子
アイドルになりたい。そう言った時、誰からも反対された。
高山紗代子
「あなたが?」「どう考えてもそんなキャラじゃないよ、無謀過ぎない?」
高山紗代子
ありがとう、とだけ答えた。私だってそう思ってるよ、でももう決めた事だからって。
高山紗代子
とにかく走った、ただひたすらがむしゃらに。
高山紗代子
足がもつれて転んで。疲れて、道に迷って。ここはどこなのか、どこに向かっているのか。
高山紗代子
分からなくなってもひたすら走って、走って。
高山紗代子
とにかく頑張る事、諦めない事。私にはそれしか無いんだ。
高山紗代子
走っているうちに声が聞こえてきた。「ファンです」「応援してるよ」
高山紗代子
嬉しい声だけじゃない。嫌な声も、馬鹿にするような声も。
高山紗代子
全部、受け止めて走った。私にはそれしか出来ないのだから。
高山紗代子
…でもやっぱり、どこかでツケは来るもので。
高山紗代子
気が付いたら、足が動かなくなっていた。走らなきゃいけないって、分かってるのに。
高山紗代子
走らなきゃダメだ、走るのを止めたら私じゃない。自分に言い聞かせた、何度も何度も。
高山紗代子
それでもやっぱり、足は動かなくなったままで。
高山紗代子
悔しかった。限界を認めたくない、諦めたくない。
高山紗代子
お願い、動いてーそう、呟いた時。
高山紗代子
…声が聞こえた。いつも聞いてる、優しい聞き慣れた声。
高山紗代子
「何でもかんでも一人でやろうとするな。お前の周りには、沢山の仲間がいるんだから。」
高山紗代子
…
高山紗代子
ああ、そうか。
高山紗代子
私は、忘れていたんだ。
高山紗代子
私と一緒に走ってくれている、皆の事を。
高山紗代子
そう。皆きっと、分かってくれる。私を待ってくれるはずだ。
高山紗代子
立ち止まったっていい、怖がらなくてもいい。置いていかれたりなんて、しないんだから。
高山紗代子
そう、思った。その時ー
高山紗代子
引っ張られていた。誰だろう、皆だろうか。それとも。
高山紗代子
それは私の腕を蠢いて、背中を突き破って。
高山紗代子
…羽根だった。太い羽根、どんな風にもびくともしない。
高山紗代子
足元を見下ろす…酷い足だ、裸足で、血塗れで。その足を見て、ふっとつぶやく。
高山紗代子
「今までありがとう、お疲れ様。ゆっくり休んでね?」
高山紗代子
…きっと飛べるはずだ。大丈夫、この羽根があるんだから。
高山紗代子
まだまだ、どこまでだって行ける。だって、皆と一緒なんだから。
高山紗代子
そう思った時、裸足の足は宙をふと浮いた。そして、大きな羽根がゆっくり羽ばたいている。
高山紗代子
そう、私を皆の待っている、空へと押し出す為に。
(台詞数: 34)