高山紗代子
うう……四月も半ばだというのに寒いね。みんなまだかなぁ。
エミリー
日差しはあるんですけど、風が強くて……
エミリー
紗代子さん、こちらの方が陽が当たって暖かいですよ?
高山紗代子
ありがとう。でも、誰かこっちにいないとブルーシートが捲れ上がっちゃうから。
エミリー
ああ、気づきませんでした……
エミリー
でしたら、こちらの荷物を置きましょう。可奈さんから預かっているんです。
高山紗代子
結構重いね。何が入ってるんだろう。
エミリー
さあ。でも他人様の荷物を勝手に開けるのは大和撫子がやることではありませんので。
高山紗代子
そうだね。じゃあ、遠慮なく使わせてもらって、と。
高山紗代子
ああ、陽が当たって気持ち良い!
エミリー
日差しは美容の敵ですけど、お花見は晴れた日にやるのが一番ですよね。
エミリー
青い空に白い雲。それに映える薄桃色の桜。これぞ日本の春です!
高山紗代子
そうだね、っと、きゃあっ!?
エミリー
大丈夫ですか!?
高山紗代子
ありがとう、大丈夫だよ。
高山紗代子
でも、これだけ風が強いと桜も散っちゃいそうだね。もっと長い間楽しめればいいのに残念。
エミリー
確かに残念ですけど、それはそれで、日本の春ではないでしょうか
高山紗代子
えっ?どうして?
エミリー
月に叢雲、花に風という言葉があります。
エミリー
これは完璧な月よりも少し雲がかった月の方が風情があって良いという意味なのですが、
高山紗代子
花、つまり桜も咲き誇った姿もいいけど、風に吹かれて散る桜も風情があって良いということだね。
エミリー
そのとおりです。
エミリー
散る桜には、無常観があります。この無常観は和の心の一つです。
エミリー
青空の下で花を愛でることは日本らしい文化ですが、散る桜に風情を感じるのもまた和の心かと。
高山紗代子
はあ〜……
エミリー
す、すいません。偉そうなこと言っちゃって
高山紗代子
ううん、そうじゃなくて
高山紗代子
エミリーちゃんって、すごいなぁと思って。私でも知らないような言葉や考え方を知ってるんだもん
エミリー
そんな……。ただ真の大和撫子になりたいからです。
高山紗代子
そうだよね。なりたいものになるために努力するのは当然のことだよね。
高山紗代子
よし!私もトップアイドルになるために、場所取りの待ち時間といえどレッスンしないと!
高山紗代子
エミリーちゃん!私、ちょっと走ってくるね!
エミリー
ええっ、紗代子さん、場所取りはどうするんですか!?……って、行っちゃいました。
エミリー
まぁ、可奈さんの荷物のおかげで場所取りも出来ますから、風に吹かれる桜と青空を堪能しましょう
エミリー
(紗代子さんは五分ほどすると事務所のみんなを連れて戻って来ました。)
エミリー
(劇場の花見はとても賑やかで、ハレの日を楽しむという和の心をまた一つ学べた気がします)
エミリー
(ところで、可奈さんが私に預けた鞄の中身ですが、なんと携帯型歌唱装置でした。)
エミリー
(何とかして可奈さんから取り上げようと茜さんは奮闘するのですが、それはまた別のお話です。)
(台詞数: 38)