近世の神 1
BGM
嘆きのFRACTION
脚本家
Կիշիրա
投稿日時
2015-09-29 03:39:28

脚本家コメント
ましたましたでしたました

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高山紗代子
私がまだ小さかった頃、すでにこの世の科学は死んでいました。
高山紗代子
私の生まれるずっと前、地球は人類を見限りました。従来より激しい天災や急速な資源の枯渇。
高山紗代子
少しの間で、たくさんの文明が無くなったそうです。
高山紗代子
私の暮らしも保証された物ではありませんでしたが、どこでどんな災が起こるのかは分かっており
高山紗代子
なんとか生き延びる事が出来ました。
高山紗代子
そして私が物心ついた頃、災を教えてくれる声が私にしか聞こえないと、なんとなく知りました。
高山紗代子
そして、その事はあまり他人には言わないようにしていました。
高山紗代子
また少し大きくなった時、私は教会で暮らすことになりました。
高山紗代子
最近出来た宗教の様でしたが、生きることに必死だった私にはどうでもいい事でした。
高山紗代子
そこで私は神様の存在を知りました。同時に、この声の正体も神様だったと思うようになりました。
高山紗代子
そうして暮らしている内、私はこの神様の声を聴く力を、他人の為に使うべきだと思い始めました。
高山紗代子
そう思った次の朝。私はその時の家族にこれを打ち明けました。
高山紗代子
最初は信じてもらえなかったので、夜に地球の反対側で地震が起こる事を伝えました。
高山紗代子
その夜のラジオで家族には信じてもらう事が出来ました。家族も私の力を広めるべきだと言いました
高山紗代子
そのまた次の日から、同じ方法で近所の人、隣町の人、河の向こうの人と名を広めていきました。
高山紗代子
神様の言葉を伝える度に人々は大規模な避難を余儀なくされましたが、命は助かりました。
高山紗代子
そのことも嬉しかったですし、人々の感謝の言葉も嬉しかったです。
高山紗代子
それからは勝手に話が広がり、多分私の事を知らない人はいなくなりました。
高山紗代子
私は英雄になりました。
高山紗代子
そんなある日、高そうな服を着た人たちが私のもとを訪れました。
高山紗代子
私に、都市の中央に来て欲しいとの事でした。私の声を効率よく世界へ回すためだそうです。
高山紗代子
それが正しいと思った私は、その人達について行く事にしました。
高山紗代子
都市では高いビルの大きな部屋と、高い権限と、不自由のない生活を与えられました。
高山紗代子
そして、神様の声が聞こえた際にはすぐに外の人に伝えられるようになっていました。
高山紗代子
しかし、いかなる理由があろうと部屋から出ることは禁じられました。
高山紗代子
……今思えば、私の伝えた声が本当に全ての人に無償で知らされていたかは分かりません。
高山紗代子
その時の私は人を疑う事を知らなかったので、疑問に思う事はありませんでした。
高山紗代子
もしかしたらこの時既に私は全ての人の英雄では無くなっていたのかもしれません。
高山紗代子
でも、高い部屋の窓から見下ろす街がだんだんと広くなり、人も多くなっているのも事実でした。
高山紗代子
……
高山紗代子
言い忘れていましたが、地球の全てを司る神様も、人の成すことは知らないようでした。
高山紗代子
どんな天災、病気、資源の在処も私は聞いていましたが、
高山紗代子
この都市がこんなに大きくなることは、聞いていませんでした。
高山紗代子
なので私により科学が復活したという事も、知ったのは随分後の事でした。
高山紗代子
復活した科学の力は凄まじく、都市は急速な発展を遂げたように見えました。
高山紗代子
私は科学とは魔法の事だったと言うのもこの時知りました。
高山紗代子
もし、これがもっと強い力を持てるならば。
高山紗代子
人は神様に勝てるのかもしれません。
高山紗代子
その時、私は心の中で矛盾に気付きました。
高山紗代子
神様は人々を見限った存在ならば、人類の敵という事。なのに……
高山紗代子
私がその声を人々に漏らしてしまったせいで、神様は敵である人類を減らせなくなり
高山紗代子
皮肉なことに、人々から信仰までされています。
高山紗代子
私は、神と人との戦争において、一方的な考えで人間側に加担していた事になります。
高山紗代子
自分自身が恐ろしくなっていたそんな時、新しい神様の声を聞きました。
高山紗代子
それによると、本格的に人に抗う事に決めたようです。しばらく後、
高山紗代子
未曽有の大災害を引き起こすことに決めたそうです。
高山紗代子
私は、これを人々伝えない事にしました。
高山紗代子
神様の意思を尊重したかったのかもしれませんし、人への同情のつもりだったのかかもしれません。
高山紗代子
その時の私はきっと、神様の様でした。いえ、もしくは……
高山紗代子
神や人さえも見下ろした、世界の主のつもりだったかもしれません。

(台詞数: 50)